同じ電車の男子高校生が気になる

「あの、あの……俺……好きです」

 言っちゃった。
 言ったよ。これでいい?
 俺が真っ赤になって先輩を見つめると、先輩はぽかんとして瞬きした。

「え?」
「え?」

 先輩が小さく声を出すから、俺も疑問符を返す。
 あれ?
 俺をまじまじと見返してくる先輩が「好き?」と呟いた。

「えっ? 先輩のことが、好きです……」

 聞こえなかったのかな、と思って俺はもう一度言ったけど、先輩が呆然としたような顔で俺を凝視してくるから、だんだん声が小さくなる。

 あれ? 思ってたのと違う。なんで先輩驚いてるんだ?

「好きなの? みずきが、俺のこと」
「はい」
「っ、え?!」

 珍しく大声を出した先輩を前にして、俺の頭の中からさーっと血の気が引いていく。

 俺、なんか、やらかしたか……?

 先輩は口に片手の甲を当てて目を見開いている。瞬きもせずに俺を見つめて、ハッと我に返ったように口を開いた。

「待って。待った、俺も。……だけど、そうじゃなくて、いや間違いはないんだけど、今? あれ? 話あるって、それ?」
「違うんですか? 前田に先輩のこと普通って言ったの、訂正したくて、普通なんて思ってないって。そしたら先輩が心の準備とか言うから、俺が好きなの気づかれてたんだって思って」

 ヤバい、なんか全然違ったみたい。
 先輩も本当に珍しく動揺していて、俺を穴が開くほど見つめてきて早口になる。

「や、俺は、みずきが前田くんと帰ることにしたから、俺とはもう一緒に電車に乗らないって、そういうことを言われるんじゃないかって覚悟したっていうか」
「ええ?! そうなんですか!? じゃ、じゃあ返してください!」

 咄嗟に叫んだら、先輩が「何を?!」と返してくる。

「俺の告白! タイミング間違ってたみたいなんで!」
「やだ! 俺も好きだもん」
「ど…………ぇえ?」

 今度は俺がぽかんと口を開けて、先輩を凝視した。
 先輩もほんのり頬を赤らめて、俺を見返してくる。

「……」

 二人で顔を見合わせて見つめ合った後、弾かれたように同時に爆笑した。

「ちょっ……なんですかこれ!」
「っ……だって、みずきが……急に告ってくるから」

 先輩が肩を震わせて笑っている。
 俺も俺の間抜けぶりに笑いが込み上げてしまい、しばらく二人で俯いて笑い倒した。

「……俺こんなの想定してなかったんですけど」
「俺もだよ。どうしよ、嬉しすぎてテンションおかしくなってる」

 先輩がようやく笑いを収めて、いつも以上に柔らかな微笑みで俺を見つめてきた。
 
「ありがと。俺もみずきのこと好き。嬉しい」

 噛み締めるようにそう言われて、また頬の熱さがぶり返してきた。血が下がったり上がったりして忙しい。俺、こんなドキドキしっぱなしで突然倒れたりしないかな。

 これって本当に俺が先輩と両想いってことであってる? まだ実感が湧かない。

「あの、ちなみになんですけど、俺の好きっていうのは友情とかじゃないんですけど……」

 念のため確認したくて先輩を見上げると、先輩はあっさり頷いた。

「うん、俺も」
「……っ、いつも女の子達が先輩に告白してくる感じの、好き、ですよ?」
「俺もそうだよ」
「ほんとですか? 弟みたいで好きっていうのとは違います?」
「うん。弟は困るって言ったの、そういう意味もある。下心あるから」
「な、なるほど……」
「みずきこそ、俺とキスとかできるの?」
「していいんですか?」
「え」

 先輩が笑顔のまま固まったから、俺はとんちんかんなことを言ったのかと焦り、恥ずかしくなったのでマフラーに半分顔を埋めた。

「間違いました。えっと、あの、はい。できます」

 てことでいいのか? と思いつつ言い直す。俺が前のめりすぎて引いた?
 先輩の反応をうかがうと、先輩は再び手の甲を口元に当てていて、ちょっと困惑顔だった。

「俺に都合よすぎて怖いんだけど……。まさか眠すぎてみずきの幻覚見てるわけじゃないよね」
「俺も同じような気持ちなんですけど……先輩、ほんとに俺のこと、好きなんですね?」
「うん、好き。俺結構わかりやすかったと思うけど」

 俺の返事を聞いた先輩は、ようやく安心したというように表情を緩めた。