「え?」
「この前の金曜日、電車で前田と話してたの、聞こえてましたよね」
「ああ、うん……」
先輩の声のトーンが若干落ちたので、俺は慌てて頭を下げた。
「先輩のいないところで失礼なこと言ってて、すみませんでした」
「いや、怒ってはないよ?」
「でも、先輩その後山﨑さんに俺のこと知らないって言ってたし」
「ん?」
俺の言葉に先輩が首を傾げて数秒沈黙し、ハッと目を見開いた。
「待った。それまさか、俺が山﨑に言ってたの聞いてたってこと?」
「あ、はい。あのとき謝ろうとして、先輩を追いかけてて」
「え!? ごめん!」
今度は先輩が慌てた顔になって、俺の肩を両手でがしっと掴んでくる。勢いに驚く俺に先輩がぐっと顔を寄せてきた。
「ごめん、知らん奴って言ったの、あれは山﨑を誤魔化すためだけにああ言ってた。怒ったわけじゃないから。身近な奴にみずきのこと知られたくなかっただけ」
「……あ、そ、そうなんですね」
先輩の美顔が迫ってきたので、俺はたじろぎつつ頷く。
怒ってなかったというのがはっきりしたので、そこはひとまずほっとした。
でもその説明を聞いたら、それって俺の存在が迷惑なんじゃ? とも思う。数日前の俺だったら確実にそう思ってただろう。
けれど、俺は昨日胡桃ちゃんから聞いた話を覚えているから、今の先輩の言い方を別の意味で捉えた。
それって山﨑さんから俺を隠そうとしてるっぽく聞こえるよな。
先輩が俺を隠したいのって、もしかしてほんとに俺のことが好きだから、だったりする……? 前に好きなものは隠したいって言ってたし、そういうニュアンスに聞こえるような……
「ほんとに怒ってないよ。みずきこそ、俺が前田君と話してるとこ邪魔したからイラッとしたでしょ」
「してませんよ」
突っ込んで聞いていいのか迷っていたら、先輩が先に聞いてきたから首を横に振った。
「でも俺、先輩にちゃんと話さないといけないことあって」
さっきの前田との話、まだちゃんと説明できてなかった。
先輩が隠したいの理由を聞くのはちょっと後にして、先に俺の釈明をしておこう。
あのとき、ただの普通の先輩だって言ったのは、俺の本心じゃない。先輩のことを大切に思ってるって伝えなきゃ。それが言いたくて先輩に会いたいって言ったんだし。
大切ってどういうこと? と突っ込まれたら、思い切って好きだって伝えてもいいのかな。
それで先輩が俺をどう思ってるのか、聞いたら教えてもらえるだろうか。悲しい結末にはならないって、今日の先輩を見てたら期待してしまうんだけど。
俺が逡巡していると、先輩は俺を真顔でじっと見つめた後、俺の肩からそろっと手を離した。
「それって、俺は心の準備をしたほうがいいやつ?」
「え?」
「ちょっと待って。メンタル整えるから」
そう言って先輩は急に瞑想し始めた。
……え?
なんだ? なんか先輩が珍しいことしてる。
なんで瞑想?
いま心の準備するって言った?
……まさかだけど先輩、俺が告白しようか迷ってるのに気づいてる……?
俺ははっと息を呑んで、目を閉じる先輩を見つめた。
えっ、うそ!? 俺の好きってもう気づかれてたの?!
予想もしなかった先輩の行動に、折れ線グラフが突如右上に向かって急上昇するように心拍が速くなる。
えっ、どうしよう。
これもしかしてこのまま告白しろって空気になってる?
俺から言っていいってこと?
つまり先輩も告られるの待ってますってことで?
突然の急展開に混乱し、頭が真っ白に霞みかけたとき、先輩が表情を引き締めて目を開いた。
「はい、どうぞ」
と言って真っ直ぐに俺を見るから、ごくりと唾を飲み込んだ。心臓が弾けそうなくらいうるさい。
ま、待ってるよってことか。
言っていいよって?
なら、ほんとに俺から言いますよ?
と、先輩のやけに真面目な顔に向かって息を大きく吸い込み、よし、と心の中で弾みをつける。
「この前の金曜日、電車で前田と話してたの、聞こえてましたよね」
「ああ、うん……」
先輩の声のトーンが若干落ちたので、俺は慌てて頭を下げた。
「先輩のいないところで失礼なこと言ってて、すみませんでした」
「いや、怒ってはないよ?」
「でも、先輩その後山﨑さんに俺のこと知らないって言ってたし」
「ん?」
俺の言葉に先輩が首を傾げて数秒沈黙し、ハッと目を見開いた。
「待った。それまさか、俺が山﨑に言ってたの聞いてたってこと?」
「あ、はい。あのとき謝ろうとして、先輩を追いかけてて」
「え!? ごめん!」
今度は先輩が慌てた顔になって、俺の肩を両手でがしっと掴んでくる。勢いに驚く俺に先輩がぐっと顔を寄せてきた。
「ごめん、知らん奴って言ったの、あれは山﨑を誤魔化すためだけにああ言ってた。怒ったわけじゃないから。身近な奴にみずきのこと知られたくなかっただけ」
「……あ、そ、そうなんですね」
先輩の美顔が迫ってきたので、俺はたじろぎつつ頷く。
怒ってなかったというのがはっきりしたので、そこはひとまずほっとした。
でもその説明を聞いたら、それって俺の存在が迷惑なんじゃ? とも思う。数日前の俺だったら確実にそう思ってただろう。
けれど、俺は昨日胡桃ちゃんから聞いた話を覚えているから、今の先輩の言い方を別の意味で捉えた。
それって山﨑さんから俺を隠そうとしてるっぽく聞こえるよな。
先輩が俺を隠したいのって、もしかしてほんとに俺のことが好きだから、だったりする……? 前に好きなものは隠したいって言ってたし、そういうニュアンスに聞こえるような……
「ほんとに怒ってないよ。みずきこそ、俺が前田君と話してるとこ邪魔したからイラッとしたでしょ」
「してませんよ」
突っ込んで聞いていいのか迷っていたら、先輩が先に聞いてきたから首を横に振った。
「でも俺、先輩にちゃんと話さないといけないことあって」
さっきの前田との話、まだちゃんと説明できてなかった。
先輩が隠したいの理由を聞くのはちょっと後にして、先に俺の釈明をしておこう。
あのとき、ただの普通の先輩だって言ったのは、俺の本心じゃない。先輩のことを大切に思ってるって伝えなきゃ。それが言いたくて先輩に会いたいって言ったんだし。
大切ってどういうこと? と突っ込まれたら、思い切って好きだって伝えてもいいのかな。
それで先輩が俺をどう思ってるのか、聞いたら教えてもらえるだろうか。悲しい結末にはならないって、今日の先輩を見てたら期待してしまうんだけど。
俺が逡巡していると、先輩は俺を真顔でじっと見つめた後、俺の肩からそろっと手を離した。
「それって、俺は心の準備をしたほうがいいやつ?」
「え?」
「ちょっと待って。メンタル整えるから」
そう言って先輩は急に瞑想し始めた。
……え?
なんだ? なんか先輩が珍しいことしてる。
なんで瞑想?
いま心の準備するって言った?
……まさかだけど先輩、俺が告白しようか迷ってるのに気づいてる……?
俺ははっと息を呑んで、目を閉じる先輩を見つめた。
えっ、うそ!? 俺の好きってもう気づかれてたの?!
予想もしなかった先輩の行動に、折れ線グラフが突如右上に向かって急上昇するように心拍が速くなる。
えっ、どうしよう。
これもしかしてこのまま告白しろって空気になってる?
俺から言っていいってこと?
つまり先輩も告られるの待ってますってことで?
突然の急展開に混乱し、頭が真っ白に霞みかけたとき、先輩が表情を引き締めて目を開いた。
「はい、どうぞ」
と言って真っ直ぐに俺を見るから、ごくりと唾を飲み込んだ。心臓が弾けそうなくらいうるさい。
ま、待ってるよってことか。
言っていいよって?
なら、ほんとに俺から言いますよ?
と、先輩のやけに真面目な顔に向かって息を大きく吸い込み、よし、と心の中で弾みをつける。
