二駅だけすぎて、先輩の高校がある駅に着く。
早い時間だから乗客はまばらに降りていくだけだ。たった二駅しか離れていないから、俺と同じ制服の学生も降りない。ホームも閑散としていた。
電車を降りて階段に向かおうとしたら、スマホが震えた。
「あ、えっ?」
画面を見て驚く。先輩からだ。しかも通話。
先輩はこの時間まだ学校終わってないはずじゃ……何かあったんだろうか。
戸惑いながら応答のアイコンを押した。先輩と通話するのは、実はこれが初めてだ。
「は、はい」
『みずき?』
先輩の声が耳元で聞こえて、うわ、と思った。久しぶりにちゃんと聞く先輩の声で、ぶわっと感情が高まる。
「ど、どうしたんですか?」
『今どこ?』
「先輩の高校の駅、着いたところです」
『じゃあそのままホームにいて。俺ももう駅着くから』
「え!?」
言われたことに仰天して、立ち止まって階段の上に顔を向けた。先輩の姿はさすがにまだ見えない。
「授業終わったんですか?」
『抜けた』
「え」
『腹痛いって適当に言って、抜けてきた』
「ええ!? だ、大丈夫なんですか」
『明日から心を入れ替えて頑張るから大丈夫』
「え、そ、はぁい……」
テンパりすぎて、俺の口から謎の声が出てる。
これって、サボったってことだよな?
まさか俺の時間に合わせるために学校抜けたってこと……?
『テンション上がっちゃって、俺が勝手に抜けてきただけだからみずきは気にしないで』
「そうはいっても、先輩の評価に影響が」
『怒んないで』
「怒ってはないですけど」
『だってみずきに会えないの寂しかったから』
う、わぁ。
通話だから、先輩の声がダイレクトに耳に入ってきて狼狽える。
全然、怒ってる感じじゃない。むしろ、どっちかと言えば嬉しそう……?
『みずき?』
スピーカーを通していても、やたら甘く響いて聞こえるのは、気のせいだろうか。
「あ、す、すみません。いま反対側に電車来て」
音を立ててホームに滑り込んできた電車の勢いで、冷たい風が吹き抜けて全身を撫でていく。思わず肩をすくめて、言い訳めいた言葉を口にしていた。
あ、ダメだ。これじゃ俺はまた間違える。ちゃんと自分の気持ちを伝えるって決めたのに。
意を決して、俺は息を吸い込んだ。
「あの、先輩、俺も――」
「おい!」
突然横から怒鳴られて、スマホを持ったまま、「うわっ」と飛び上がった。
そっちを見ると、スーツを着た中年のサラリーマンが立っている。険しい顔で俺を見てくる人相に、見覚えがありすぎる。
神経質そうな中年男。あいつだ。あのときの痴漢に間違いない。
警戒して距離を取る前に、男が大きく口を開いた。
「お前、この前の奴だろう!」
「……は?」
「間違いない。お前らのせいで大変な目に遭ったんだ!」
早い時間だから乗客はまばらに降りていくだけだ。たった二駅しか離れていないから、俺と同じ制服の学生も降りない。ホームも閑散としていた。
電車を降りて階段に向かおうとしたら、スマホが震えた。
「あ、えっ?」
画面を見て驚く。先輩からだ。しかも通話。
先輩はこの時間まだ学校終わってないはずじゃ……何かあったんだろうか。
戸惑いながら応答のアイコンを押した。先輩と通話するのは、実はこれが初めてだ。
「は、はい」
『みずき?』
先輩の声が耳元で聞こえて、うわ、と思った。久しぶりにちゃんと聞く先輩の声で、ぶわっと感情が高まる。
「ど、どうしたんですか?」
『今どこ?』
「先輩の高校の駅、着いたところです」
『じゃあそのままホームにいて。俺ももう駅着くから』
「え!?」
言われたことに仰天して、立ち止まって階段の上に顔を向けた。先輩の姿はさすがにまだ見えない。
「授業終わったんですか?」
『抜けた』
「え」
『腹痛いって適当に言って、抜けてきた』
「ええ!? だ、大丈夫なんですか」
『明日から心を入れ替えて頑張るから大丈夫』
「え、そ、はぁい……」
テンパりすぎて、俺の口から謎の声が出てる。
これって、サボったってことだよな?
まさか俺の時間に合わせるために学校抜けたってこと……?
『テンション上がっちゃって、俺が勝手に抜けてきただけだからみずきは気にしないで』
「そうはいっても、先輩の評価に影響が」
『怒んないで』
「怒ってはないですけど」
『だってみずきに会えないの寂しかったから』
う、わぁ。
通話だから、先輩の声がダイレクトに耳に入ってきて狼狽える。
全然、怒ってる感じじゃない。むしろ、どっちかと言えば嬉しそう……?
『みずき?』
スピーカーを通していても、やたら甘く響いて聞こえるのは、気のせいだろうか。
「あ、す、すみません。いま反対側に電車来て」
音を立ててホームに滑り込んできた電車の勢いで、冷たい風が吹き抜けて全身を撫でていく。思わず肩をすくめて、言い訳めいた言葉を口にしていた。
あ、ダメだ。これじゃ俺はまた間違える。ちゃんと自分の気持ちを伝えるって決めたのに。
意を決して、俺は息を吸い込んだ。
「あの、先輩、俺も――」
「おい!」
突然横から怒鳴られて、スマホを持ったまま、「うわっ」と飛び上がった。
そっちを見ると、スーツを着た中年のサラリーマンが立っている。険しい顔で俺を見てくる人相に、見覚えがありすぎる。
神経質そうな中年男。あいつだ。あのときの痴漢に間違いない。
警戒して距離を取る前に、男が大きく口を開いた。
「お前、この前の奴だろう!」
「……は?」
「間違いない。お前らのせいで大変な目に遭ったんだ!」
