先輩に似た茶色の目を見返して息を呑んだ。
先輩の彼女……?
動揺して、まじまじと胡桃ちゃんの顔を見つめる。
胡桃ちゃんはテーブルの上に置いたスマホを指で握りながら力強く主張した。
「絶対いるの。最近できた。間違いないもん」
「ほ、ほんと……?」
「庵野さん、知らないですか?」
「うん」
そんな情報、知れるなら俺だって知りたいし。
いや、でも、本当に先輩に彼女がいるなんて知ったら辛すぎるかも。
知らないままでいいような……いや、やっぱり気になる。
胡桃ちゃんは俺の表情を観察するようにじいっと眺た後、肩を落としてため息を吐いた。
「えー、庵野さんもダメか……。最近スマホよく見てるし、誰かとずっとやり取りしてるし、機嫌良さそうだったから、絶対彼女できたと思ってるのに」
「なんで俺が知ってると思ったの?」
「だってお兄ちゃん、庵野さんのこと本気で信頼してるって感じだったから。この前のとき」
「そ、そうかな……」
「うん。普段は基本カッコつけててすんとしてるのに、庵野さんと話すときだけなんか素っぽかったから」
素っぽいと言われて、ちょっと複雑だ。気を許してくれてるんだと喜ぶべきなのか、意識されてないんだって悲しむべきなのか。
俺はブラックのままコーヒーを一口飲んで、内心かなりへこんだ気持ちが顔に出ないように誤魔化した。
先輩に彼女ができたって。
どうしよう。恐れていたことが現実になってしまった。
彼女ができたなら、また元の時間に乗るようになったとしても、もう俺とは一緒に行ってくれない。
項垂れるような気持ちで落ち込んでいたら、胡桃ちゃんが自分の紅茶に砂糖とミルクを入れながらぽそっと呟く。
「やっぱり誰にもバレないようにしてるんだ……もぉ、絶対教えてくれないんだから」
拗ねたような声で言った言葉が気になって、俺は首を傾げた。
「バレないようにって? 彼女のこと?」
「そう。お兄ちゃん、彼女ができたら絶対に周りに言わないから。徹底して隠し通すの」
「そうなの? なんでだろう」
「中学のとき、色々あったんだって。私が言うのもなんだけど、お兄ちゃんって、カッコいいじゃないですか」
「うん」
即答すると、胡桃ちゃんは拗ねていた顔を少し緩めて、ふふっと嬉しそうに笑う。
それから俺を見て、ちょっと眉尻を下げた。
「だから、彼女になった子へのいじめがすごいみたいで。もう陰で猛烈に攻撃されるらしくって、そのせいでお兄ちゃん、心のシャッター閉ざしましたって、前に話してたとき言ってた」
「ああ、周りから嫉妬されちゃって」
「そう。だから彼女作るなら絶対隠すんだって。誰にも言わないからって、学校関係ない私が聞いても教えてくれないもん」
「そっか……」
先輩が前に呟いていたセリフをふいに思い出した。
あれ、いつのことだっただろう。
好きなものは秘密にしておきたいタイプって、呟いてた気がする。そのときは好きっていう言葉に反応しちゃって、俺は先輩の言葉の意味を深く考えなかった。
でもあのときの言葉って、俺のことを気に入ってるって意味で言ってくれてたはずなんだよな。
確か、山崎さんと一緒に電車に乗ってきて、そのときも他人のふりしてた……。ん?
「庵野さん、時間大丈夫でした? 無理やり引っ張ってきちゃってすみません」
深く思い返そうとしたとき、胡桃ちゃんが話しかけてきたので思考を中断した。
「うん。俺は平気」
まだ昼前だから、今から帰れば明日の試験勉強をする時間は十分ある。胡桃ちゃんが元気そうだとわかったから、偶然だったけど話ができてよかった。
カウンターに置いたスマホをタップして、一応時間を確かめておく。
「あ」
と、そのとき声を漏らした胡桃ちゃんが横から俺のスマホを覗き込んできた。
「へんなやつだ」
「え?」
「これ、何ですか? お兄ちゃんが鍵につけてんの。なんかのキャラ?」
言われて自分の待ち受けの画像を見た。俺が設定しているのは、ここでも推しキャラのひじきだ。
先輩の彼女……?
動揺して、まじまじと胡桃ちゃんの顔を見つめる。
胡桃ちゃんはテーブルの上に置いたスマホを指で握りながら力強く主張した。
「絶対いるの。最近できた。間違いないもん」
「ほ、ほんと……?」
「庵野さん、知らないですか?」
「うん」
そんな情報、知れるなら俺だって知りたいし。
いや、でも、本当に先輩に彼女がいるなんて知ったら辛すぎるかも。
知らないままでいいような……いや、やっぱり気になる。
胡桃ちゃんは俺の表情を観察するようにじいっと眺た後、肩を落としてため息を吐いた。
「えー、庵野さんもダメか……。最近スマホよく見てるし、誰かとずっとやり取りしてるし、機嫌良さそうだったから、絶対彼女できたと思ってるのに」
「なんで俺が知ってると思ったの?」
「だってお兄ちゃん、庵野さんのこと本気で信頼してるって感じだったから。この前のとき」
「そ、そうかな……」
「うん。普段は基本カッコつけててすんとしてるのに、庵野さんと話すときだけなんか素っぽかったから」
素っぽいと言われて、ちょっと複雑だ。気を許してくれてるんだと喜ぶべきなのか、意識されてないんだって悲しむべきなのか。
俺はブラックのままコーヒーを一口飲んで、内心かなりへこんだ気持ちが顔に出ないように誤魔化した。
先輩に彼女ができたって。
どうしよう。恐れていたことが現実になってしまった。
彼女ができたなら、また元の時間に乗るようになったとしても、もう俺とは一緒に行ってくれない。
項垂れるような気持ちで落ち込んでいたら、胡桃ちゃんが自分の紅茶に砂糖とミルクを入れながらぽそっと呟く。
「やっぱり誰にもバレないようにしてるんだ……もぉ、絶対教えてくれないんだから」
拗ねたような声で言った言葉が気になって、俺は首を傾げた。
「バレないようにって? 彼女のこと?」
「そう。お兄ちゃん、彼女ができたら絶対に周りに言わないから。徹底して隠し通すの」
「そうなの? なんでだろう」
「中学のとき、色々あったんだって。私が言うのもなんだけど、お兄ちゃんって、カッコいいじゃないですか」
「うん」
即答すると、胡桃ちゃんは拗ねていた顔を少し緩めて、ふふっと嬉しそうに笑う。
それから俺を見て、ちょっと眉尻を下げた。
「だから、彼女になった子へのいじめがすごいみたいで。もう陰で猛烈に攻撃されるらしくって、そのせいでお兄ちゃん、心のシャッター閉ざしましたって、前に話してたとき言ってた」
「ああ、周りから嫉妬されちゃって」
「そう。だから彼女作るなら絶対隠すんだって。誰にも言わないからって、学校関係ない私が聞いても教えてくれないもん」
「そっか……」
先輩が前に呟いていたセリフをふいに思い出した。
あれ、いつのことだっただろう。
好きなものは秘密にしておきたいタイプって、呟いてた気がする。そのときは好きっていう言葉に反応しちゃって、俺は先輩の言葉の意味を深く考えなかった。
でもあのときの言葉って、俺のことを気に入ってるって意味で言ってくれてたはずなんだよな。
確か、山崎さんと一緒に電車に乗ってきて、そのときも他人のふりしてた……。ん?
「庵野さん、時間大丈夫でした? 無理やり引っ張ってきちゃってすみません」
深く思い返そうとしたとき、胡桃ちゃんが話しかけてきたので思考を中断した。
「うん。俺は平気」
まだ昼前だから、今から帰れば明日の試験勉強をする時間は十分ある。胡桃ちゃんが元気そうだとわかったから、偶然だったけど話ができてよかった。
カウンターに置いたスマホをタップして、一応時間を確かめておく。
「あ」
と、そのとき声を漏らした胡桃ちゃんが横から俺のスマホを覗き込んできた。
「へんなやつだ」
「え?」
「これ、何ですか? お兄ちゃんが鍵につけてんの。なんかのキャラ?」
言われて自分の待ち受けの画像を見た。俺が設定しているのは、ここでも推しキャラのひじきだ。
