急いで説明しなくちゃ。
先輩、何か勘違いしてた。付き合わせてごめんって言ってた? それって、俺が先輩のこと普通って言っちゃったから?
全然違う。俺は先輩と電車で話せるの何よりも楽しみにしてるのに。
先輩は山﨑さんに合流して、こっちに背中を向けている。俺は人の間を縫って先輩に近づいた。
どうしよう、なんて声かけるのがいいんだろう。
話したいですって? そう言ったら先輩は俺の話聞いてくれるかな。
「なに? 知り合いいた?」
山崎さんが先輩と話しているのが聞こえる。
もう少しで先輩の肩に手が届くという距離まで近づいたら、俺に背を向けた先輩が首を横に振った。
「いや、知らん人。勘違いだった」
その声を聞いて、足がぴたりと止まった。
「そなの? でもなんか話してなかった?」
「全然。人違いだわ。いいから奥進んで。ここ人多いから邪魔」
先輩は迷いない足取りで車両の奥に歩いていく。山崎さんも先輩を追っていって、二人の姿は乗客の間に消えていった。
俺は立ち止まったままもう声もかけられず、息をすることも忘れていた。
知らない人って言われた。
人違いだって。
俺のこと、もう知り合いとも思わないって、そういう意味なんだろうか。
どうしよう。怒らせた……?
立ちすくんでいたら周りから変な目で見られたので、俺は深呼吸してから気持ちをなんとか立て直し、とぼとぼ前田のところに戻った。
「先輩どうだった……って、え?! どした?!」
前田はスマホから顔を上げて、俺を見るなり目を丸くする。俺は俯いて、沈んだ声で答える。
「声、かけれなかった。先輩怒ってる」
「え、まじ? やっぱ俺がやらかした感じ?」
焦った顔になる前田に首を横に振る。
「俺が悪いんだと思う。もう今まで通り仲良くしてもらえないかも……」
「ええ……? とりあえず、家帰ってもう一回連絡してみたら? 多分春川先輩、みずきには怒ってないと思うけど。俺が邪魔で話しかけられなかったんじゃん?」
「……でも」
「振り向いたとき、視線超怖かったもん。先輩が俺のこと怒ってたら教えて。めっちゃ謝るから」
前田はそう言って俺を励まそうとしてくれたけど、俺は結局、家に帰ってからも先輩に連絡できなかった。
もう話しかけんなって、返事が来るんじゃないかって怖くなってしまったんだ。
先輩が俺と前田の会話を聞いていたなら、調子に乗ってると思われてもおかしくない。たくさん気にかけてもらったのに、普通にただの先輩だから、なんて言われたら気分が悪いだろう。
俺への信頼に致命的な亀裂が入ってしまったんじゃないだろうか。
下手に言い訳したら、完全に壊れて修復できなくなるかもしれない。
誤解を解きたくても、文字で上手く説明できる気がしなくて、ぐるぐる悩んでいるうちに寝る前になってしまった。
ベッドの上で膝を抱えて迷っていたら、そのとき一通だけ先輩からメッセージが来た。ぱっと明るくなったスマホの画面を見て、小さく息を呑む。
怒ってたらどうしよう。
そう思いながら、おそるおそる画面を開いてみる。
『今日、邪魔してごめんね テスト勉強がんばって』
それだけの、シンプルな文だった。
それがいつも通りの先輩なのか、遠回しの拒絶なのか、わからない。わからないから、もっと不安になる。
しばらく悩んでから、結果として俺は今日のことを蒸し返さないことにした。
『ありがとうございます おやすみなさい』
そう短い文だけ返すとすぐに既読になったけど、その後先輩からの返事は来なかった。
先輩、何か勘違いしてた。付き合わせてごめんって言ってた? それって、俺が先輩のこと普通って言っちゃったから?
全然違う。俺は先輩と電車で話せるの何よりも楽しみにしてるのに。
先輩は山﨑さんに合流して、こっちに背中を向けている。俺は人の間を縫って先輩に近づいた。
どうしよう、なんて声かけるのがいいんだろう。
話したいですって? そう言ったら先輩は俺の話聞いてくれるかな。
「なに? 知り合いいた?」
山崎さんが先輩と話しているのが聞こえる。
もう少しで先輩の肩に手が届くという距離まで近づいたら、俺に背を向けた先輩が首を横に振った。
「いや、知らん人。勘違いだった」
その声を聞いて、足がぴたりと止まった。
「そなの? でもなんか話してなかった?」
「全然。人違いだわ。いいから奥進んで。ここ人多いから邪魔」
先輩は迷いない足取りで車両の奥に歩いていく。山崎さんも先輩を追っていって、二人の姿は乗客の間に消えていった。
俺は立ち止まったままもう声もかけられず、息をすることも忘れていた。
知らない人って言われた。
人違いだって。
俺のこと、もう知り合いとも思わないって、そういう意味なんだろうか。
どうしよう。怒らせた……?
立ちすくんでいたら周りから変な目で見られたので、俺は深呼吸してから気持ちをなんとか立て直し、とぼとぼ前田のところに戻った。
「先輩どうだった……って、え?! どした?!」
前田はスマホから顔を上げて、俺を見るなり目を丸くする。俺は俯いて、沈んだ声で答える。
「声、かけれなかった。先輩怒ってる」
「え、まじ? やっぱ俺がやらかした感じ?」
焦った顔になる前田に首を横に振る。
「俺が悪いんだと思う。もう今まで通り仲良くしてもらえないかも……」
「ええ……? とりあえず、家帰ってもう一回連絡してみたら? 多分春川先輩、みずきには怒ってないと思うけど。俺が邪魔で話しかけられなかったんじゃん?」
「……でも」
「振り向いたとき、視線超怖かったもん。先輩が俺のこと怒ってたら教えて。めっちゃ謝るから」
前田はそう言って俺を励まそうとしてくれたけど、俺は結局、家に帰ってからも先輩に連絡できなかった。
もう話しかけんなって、返事が来るんじゃないかって怖くなってしまったんだ。
先輩が俺と前田の会話を聞いていたなら、調子に乗ってると思われてもおかしくない。たくさん気にかけてもらったのに、普通にただの先輩だから、なんて言われたら気分が悪いだろう。
俺への信頼に致命的な亀裂が入ってしまったんじゃないだろうか。
下手に言い訳したら、完全に壊れて修復できなくなるかもしれない。
誤解を解きたくても、文字で上手く説明できる気がしなくて、ぐるぐる悩んでいるうちに寝る前になってしまった。
ベッドの上で膝を抱えて迷っていたら、そのとき一通だけ先輩からメッセージが来た。ぱっと明るくなったスマホの画面を見て、小さく息を呑む。
怒ってたらどうしよう。
そう思いながら、おそるおそる画面を開いてみる。
『今日、邪魔してごめんね テスト勉強がんばって』
それだけの、シンプルな文だった。
それがいつも通りの先輩なのか、遠回しの拒絶なのか、わからない。わからないから、もっと不安になる。
しばらく悩んでから、結果として俺は今日のことを蒸し返さないことにした。
『ありがとうございます おやすみなさい』
そう短い文だけ返すとすぐに既読になったけど、その後先輩からの返事は来なかった。
