同じ電車の男子高校生が気になる

 ◇


 金曜日、この日のテストも無事終わった。

「おーい二人待って、俺も帰る」

 チャリを押す黒木と校門から出たところで、前田が追いかけてきた。

「西野達は?」
「今日は早め解散。テスト勉してなすぎてヤバいって。みずき、電車でさっきの古文答え合わせしよ」
「いいよ」
「電車いいな~。俺はこの寒い中チャリだよ」
「電車もホームは寒いよ」
「でも雨の日も風の日も、チャリだぜ……」
「雨のカッパ厳しいよな」
「そうなんだよ、あれフード意味ねーんだよ。顔に張りついてくるし、顔も眼鏡も全部濡れる」

 チャリ通の厳しさを訴えてくる黒木を、前田がうんうんと慰めている。俺も世間話に相づちを打ちながら、黒木と別れた後、昨日と同じように前田と一緒に駅のホームに並んだ。
 スマホを見たら、通知が来ている。
 春川先輩からのメッセージだったからすぐ開いた。
 受信したのは校門を出たくらいの時間だ。先輩達も試験で早く終わったんだろう。

『おつかれ 俺は今日で期末終わった』
『お疲れ様です 俺はテスト月曜までです』

 電車を待ちながらそう返すと、すぐに返事があった。

『みずきもおつかれ あとちょっと頑張れ』

 シュポンとメッセージと共にブサ猫が手を振ってるスタンプが送られてきて、顔がほころぶ。

『みずきはまだ学校?』

 続いて送られてきたメッセージに『いま前田と帰るところです』と打ち込んで返した。
 そのタイミングで電車が来たので、前田と一緒に乗り込む。帰宅の学生がいっぱいいるから、奥まで進んで俺が連結部の扉の近くに立った。前田は俺の横で鞄を床に置く。

 開いたままだったスマホのトーク画面が見えたのか、前田が俺に聞いてきた。

「もしかして春川先輩?」
「うん。先輩の方はテスト終わったみたい」
「あ、そうなん? 報告し合ってんの? ほんと仲いいね」

 感心した顔の前田に、何と返すのが正解なのか咄嗟にわからず、「うん」とだけ頷いた。
 スマホが震えて、先輩から返事が来る。

『また前田君と帰ってる』

 というメッセージが、ブサ猫のスタンプと共に送られてきた。今度は猫がこっちに背中を向けて、ふて寝してる。
 このスタンプの意味は……と考えていたら、前田が突然「げ」と呻いた。

「なに? どうしたの」
「さっきの古文、致命傷を負ったことが判明」

 差し出されたスマホの画面を覗くと、受験生用の古文の解説サイトらしく、見ると確かに今日のテストで出た古文の一節と同じだった。訳が載っているので、俺もさっと読んでみる。

「ここ、絶対現在の話だと思ったのに、過去の経緯かよ~」
「ほんとだ。俺も間違えたかも」

 終わったことだから今更だけど、気になってしまうのは仕方ない。しばらく二人で前田のスマホを覗き、問題と解答を言い合って答え合わせした。

「――やめよう、もう過去は変えられないんだし。不毛だよ」
「テンション下がるだけでな。月曜の勉強しよ。化学の元素記号、俺いまだに覚えられないんだけど」
「俺は覚えたよ。前に先輩に覚え方教わったから」
「なにい? ずるいやつ……俺にも教えて」
「いいけど。ちょっと待って。前聞いたやつ送るから」
「春川先輩は頭もいいのか……完璧すぎん? あの顔で背も高くて頭もいいってずるくない?」
「前田だって背高いじゃん」
「背、だけな! ……つか、トーク画面遡るの長すぎなんだけど。どんだけやり取りしてんの。カップルか」

 話しながら指を動かしていたら、前田が突っ込んできたので、ドキッとした。スクロールする指を止めて、言い訳を考える。

「本の感想とか、送ってたら長文になっちゃうから」

 画面を見ながら呟いたら、前田はふうん、と頷いた。

「まあ、俺も意味もなくスタンプ送り合ったりするけどね。夜暇なら俺にも話しかけてよ」
「え?」
「俺も話したい。俺とも仲良くして。みずきってマイペースなイメージあったから、豆に連絡すんの嫌なタイプかと思ってた。それとも先輩がイケメンだからなのか……?」

 そこで前田がふと気づいたような表情になり、真顔で俺に顔を寄せてきた。

「昨日の話って、もしかしてだけど先輩のことだったりする?」
「……っえ」