「そうなの?」
「うん。俺の場合、友達になってからの延長で好きになるってパターン多いから。好きだなって思ったら、話してるときの流れで付き合う? とか普通に言っちゃう」
「仲良いいのにフラれたら気まずいとかないの?」
「んー。ごめんならごめんで笑いに変えちゃうし、相手がそういうんじゃないって言うなら、合わせられるかな」
「そうなんだ……」
感心して、俺は瞬きする。
聞いたはいいものの、レベルの高い話で俺にはとても真似できそうにない。
だって合わせられるってなんだ。友達関係を望まれるなら、感情の軌道修正ができるってこと? すごいな。
俺には……できるだろうか。もし先輩にフラれたら、なかったことでお願いしますって言えばいいの……?
難しい顔をしている俺を見て、前田はちょっと慌てた。
「いや、これ俺の場合だから。みずきと俺の付き合うっていう定義がそもそもちょっと違うかも。俺のはほんと、一緒にいて楽しいから付き合えばいいじゃんっていうか、付き合ってみて色々知ればいいじゃんってスタンスだからさ」
考えるような顔をしつつ説明してくれた前田は、初めて見る大人っぽい顔で俺に笑いかけた。
「みずきの好きって、そういうんじゃないんじゃない?」
「……うん」
前田の言う通りだ。
俺の先輩への気持ちは、もう友達と恋人の間をいったり来たりできるようなものでは、多分ない。
俺はずっと先輩を好きだと思う。これから先輩の何を知っても、ずっと好きでい続ける自信がある。
打ち明けることでこの気持ちが壊れてしまうなら、告白せずに先輩を見ているだけでいいのかも。
なんだ、俺の中で答えはもう出てるじゃないか。
「前田、ありがとう。ちょっと開き直れたかも」
「そ? ならいいけど。結果として、俺の適当さが露呈しただけな気もするな」
「そんなことない。前田は付き合った相手に対してはちゃんとしてたし、自分があるって感じがする」
西野達が元カノの悪口を言ってたことに対する態度を見ても、根っこの部分は誠実なんだと思う。
「みずきに言われると真面目に照れんな。どうしよ」
前田はまたペットボトルを頬に当てて笑い、「でもさ」と口に出した。
「全然思ってもみない子から告白されんのも、嬉しいよ。俺のこといつから好きでいてくれたのかなって思うし。告っちゃってから、相手がその気になるってこともあるんじゃない?」
「……前田、やっぱすごいね」
「え?」
俺だったら、突然人から好きだと言われたらまず困惑するだろう。何の意図が? とか、絶対考えてしまう。
前田はそもそも持ち前の性質が前向きなんだ。俺とは違う。
それで多分、先輩とも違う。
きっと先輩は先輩で、感じ方が俺とも前田とも違うんだ。
そう実感しただけで、なんとなく胸がすっきりしたのがわかった。
俺は前田を見上げ、お礼を言った。
「色々ありがと。前田を好きになる子の気持ち、ちょっとわかった気がする」
「え!? 突然の告白!? まさか好きなのって、俺!?」
「なわけはないけど」
「ですよね~」
わざとらしく腕を組む前田に苦笑して、ちょうど電車が来たから一緒に乗り込んだ。
会えなくなって、これからだんだん疎遠になったとしても、先輩を好きでいることはできる。
同じ沿線に住んでいて、同じ路線の電車で毎日移動しているのに、朝の時間が交わらないだけでものすごく遠くにいるように感じるのが、なんだか不思議だ。
電車の窓から流れる街を眺めながら、昨日本棚に並んでいた小説のタイトルが頭に浮かぶ。
俺が先輩に会おうと思ったら、光の速さで進む必要なんてない。
でも、何光年も離れているわけじゃないのに、会えないだけで、こんなに遠く感じる。
「うん。俺の場合、友達になってからの延長で好きになるってパターン多いから。好きだなって思ったら、話してるときの流れで付き合う? とか普通に言っちゃう」
「仲良いいのにフラれたら気まずいとかないの?」
「んー。ごめんならごめんで笑いに変えちゃうし、相手がそういうんじゃないって言うなら、合わせられるかな」
「そうなんだ……」
感心して、俺は瞬きする。
聞いたはいいものの、レベルの高い話で俺にはとても真似できそうにない。
だって合わせられるってなんだ。友達関係を望まれるなら、感情の軌道修正ができるってこと? すごいな。
俺には……できるだろうか。もし先輩にフラれたら、なかったことでお願いしますって言えばいいの……?
難しい顔をしている俺を見て、前田はちょっと慌てた。
「いや、これ俺の場合だから。みずきと俺の付き合うっていう定義がそもそもちょっと違うかも。俺のはほんと、一緒にいて楽しいから付き合えばいいじゃんっていうか、付き合ってみて色々知ればいいじゃんってスタンスだからさ」
考えるような顔をしつつ説明してくれた前田は、初めて見る大人っぽい顔で俺に笑いかけた。
「みずきの好きって、そういうんじゃないんじゃない?」
「……うん」
前田の言う通りだ。
俺の先輩への気持ちは、もう友達と恋人の間をいったり来たりできるようなものでは、多分ない。
俺はずっと先輩を好きだと思う。これから先輩の何を知っても、ずっと好きでい続ける自信がある。
打ち明けることでこの気持ちが壊れてしまうなら、告白せずに先輩を見ているだけでいいのかも。
なんだ、俺の中で答えはもう出てるじゃないか。
「前田、ありがとう。ちょっと開き直れたかも」
「そ? ならいいけど。結果として、俺の適当さが露呈しただけな気もするな」
「そんなことない。前田は付き合った相手に対してはちゃんとしてたし、自分があるって感じがする」
西野達が元カノの悪口を言ってたことに対する態度を見ても、根っこの部分は誠実なんだと思う。
「みずきに言われると真面目に照れんな。どうしよ」
前田はまたペットボトルを頬に当てて笑い、「でもさ」と口に出した。
「全然思ってもみない子から告白されんのも、嬉しいよ。俺のこといつから好きでいてくれたのかなって思うし。告っちゃってから、相手がその気になるってこともあるんじゃない?」
「……前田、やっぱすごいね」
「え?」
俺だったら、突然人から好きだと言われたらまず困惑するだろう。何の意図が? とか、絶対考えてしまう。
前田はそもそも持ち前の性質が前向きなんだ。俺とは違う。
それで多分、先輩とも違う。
きっと先輩は先輩で、感じ方が俺とも前田とも違うんだ。
そう実感しただけで、なんとなく胸がすっきりしたのがわかった。
俺は前田を見上げ、お礼を言った。
「色々ありがと。前田を好きになる子の気持ち、ちょっとわかった気がする」
「え!? 突然の告白!? まさか好きなのって、俺!?」
「なわけはないけど」
「ですよね~」
わざとらしく腕を組む前田に苦笑して、ちょうど電車が来たから一緒に乗り込んだ。
会えなくなって、これからだんだん疎遠になったとしても、先輩を好きでいることはできる。
同じ沿線に住んでいて、同じ路線の電車で毎日移動しているのに、朝の時間が交わらないだけでものすごく遠くにいるように感じるのが、なんだか不思議だ。
電車の窓から流れる街を眺めながら、昨日本棚に並んでいた小説のタイトルが頭に浮かぶ。
俺が先輩に会おうと思ったら、光の速さで進む必要なんてない。
でも、何光年も離れているわけじゃないのに、会えないだけで、こんなに遠く感じる。
