同じ電車の男子高校生が気になる

「はい、あげる」
「え」
「あったかいお茶みんな買われててこれしかなかった。どっちがいい?」

 差し出されたのは小さいペットボトルのホットレモンと、お汁粉の缶だ。

「レモン一つ買ったら売り切れた。あの自販機、品薄すぎ」

 一昨日の夜を思い出す。そういえばあのお汁粉は、胡桃ちゃんが持って帰ったけど家で飲んでくれたんだろうか。
 俺がじっとお汁粉の缶を見ていると、前田が缶を差し出してきた。

「お汁粉にする?」
「うん」
「まじ? ネタだったのに。みずきお汁粉好きなの?」
「飲んだことない」
「なんだそれ」

 前田が笑って、「まぁ、カイロの代わりにはなるな」と俺の手に渡してくれた。

「お金払うよ」
「いい、ポイントあったから」

 そう言われたがさすがに悪い気がして財布を出そうとしたけど、頑なに断られた。
 粘り続けるのも気を悪くさせそうなので、ここは素直にお礼を言って引き下がる。
 缶は熱すぎて、カーディガンの袖を伸ばして包んだらちょうどよかった。手が温かくなってほっとしていると、前田が改めて聞いてくる。

「みずきはどうした? なんか元気なくない?」

 黒木にも言われたけど、俺はそんなに悲壮な顔をしてるんだろうか。自分ではいつも通りのつもりでいるのに。

 夕方の早い時間だからか、電車の間隔は長くてまだ少し時間がある。
 ふと、前田に話してみようと思った。

 前田なら、恋愛経験豊富だ。そして茶化したりせずに、ちゃんと聞いてくれそう。誰にでも公平だし、俺も話しやすいし。

「あのさ……好きになった人が、仲いい人だったら、前田なら告る?」

 そう聞くと、前田は一瞬ぽかんとした。
 俺をまじまじと見て、ちょっと照れたような顔になった。

「みずきからそういう話聞くと思わんかった。なにげに恥ずい」
「なんで前田が照れてんの」
「いやごめん。誰かと面と向かって恋バナすんの久々で。なに? みずきの話?」

 前田はホットレモンのペットボトルを、何故か頬に当てている。赤くなった顔を冷まそうとしているんだろうか。
 でもそれホットだから顔の熱は別に冷めないけど、と内心ツッコミつつも声には出さず、俺は小さく頷いた。

「俺はそういうのよくわからないから、前田なら彼女いっぱいいたし、いいアドバイスくれるかなって思って」
「え? 俺そんなこなれた風に見える?」
「うん。前田ならどうするのか気になる」
「そう? まあ、みずきの頼みならちゃんと答えるよ。責任重大っぽいし。うーん……俺は結構、すぐ告っちゃうかも」

 ペットボトルを手で弄びながら、前田が考えるように首を傾ける。