同じ電車の男子高校生が気になる

「実はもう持ってて。この前、七回回して一つゲットしたんです」

 ひじきが出るまでに七回かかった。きんぴらとか切り干し大根が連続で出たから、そいつらは今俺の本棚に並んでいる。
 先輩はぱちぱち瞬きして、小さく噴き出した。

「ごめん、知らずにドヤッてた」
「いや、全然! すみません、知らんふりしてもらうのもダメな気がして」
「いいよ。みずきのそういうところ好きだから」

 さらっと言われて心臓がとん、と跳ねる。頬が熱くなって目線を手元に落としたら、先輩が手を差し出してきた。

「じゃあそれ、やっぱ俺がつけようかな」
「いえ! これはせっかくなのでいただきます」

 先輩が俺のためにガチャガチャ回してくれたんだから、これは俺がほしい。
 取られないようにきゅっと手を握ったら、先輩は俺を見つめてふっと微笑んだ。それから少し考える顔をして、俺がリュックの上に置いていた鍵の方を指差してきた。

「じゃ、そっちと交換してくれる? みずきが俺があげたひじきを鍵につけて、俺はみずきがもともと持ってたやつもらうよ」

 それならあげたっていう体は崩れないから。と先輩が言ったのでなるほど、と頷く。
 ひじきとひじきを交換するという、謎の物々交換だけどそれなら先輩に気まずい思いもさせないしいいかも。
 俺は家の鍵についていたひじきを外して、先輩にあげた。

「ちょっと擦れて汚れちゃってるから、すみませんなんですけど」
「全然いいよ。俺も鍵につけようかな。みずきとお揃い」

 心なしか機嫌の良さそうな声で先輩が言った。
 お揃いか、確かにそうなる。と思って、俺は内心でそわそわする。

 先輩からもらったひじきをつけなおした家の鍵は、さっきまでと全く同じ見た目のはずなのに、なんとなく今までよりももっと大事なものになったような気がした。

「みずき、この前の本読んだ? ホラーのやつ」
「真冬のホラー企画のやつですね。読みました。俺はあれが一番怖かったです。怨霊が家じゃなくて土地に憑いてるっていう話」
「ああ、あれは俺も怖かった。そんな昔まで遡ったらもうどこにも安全地帯ないじゃんって」

 大手の書店サイトでホラー作品の紹介ページがあるのを見つけて、先週から先輩と一緒に興味がある本をそれぞれ選んで読んでいる。
 先輩はホラーが好きみたいだから、一覧にある本は結構読んでいて、俺の感想を楽しそうに聞いてくれるから嬉しい。

「ホラーを夜に読むの怖くないですか? 怖い話読んだ後、ベッドの下怖くて覗けないし」
「えっ可愛い……」
「はい?」
「怖くなったら連絡して。励ますから」
「ありがとうございます……」

 可愛いってどういう意味なのか、と先輩にツッコミを入れようとしたら頭を撫でられた。
 家に行った日から、先輩はちょくちょく俺の頭を撫でてくる。弟は困ると言われたけど、やっぱり弟がほしいのかもしれない。

 俺は可愛いって言われると何故か嬉しくて、先輩に頭を撫でられると安心するっていうよりも、どっちかというと触られてドキドキしてしまうんだけど。

 ……やっぱり、これって好きってことなんだろうか。

 頭を悩ませつつも、この答えがどうやったらわかるのか、見当もつかない。
 あと数週間で冬休みになる。
 休みになったら朝先輩と会えないから、そう思ったら今からもう寂しい。