ぼそっと呟かれたので、「え?」と聞き返す。
おこがましい? さすがに調子に乗りすぎた?
俺がショックを受けて固まったら、先輩は急に表情を和らげてじっと見つめてきた。
「みずきが弟だったら、俺溺愛しちゃう自信あるから困る」
「は、はい?」
「同じ家の中にいたらヤバいでしょ。みずきのことずっと抱えて歩くよ、俺」
「せ、先輩……?」
「あ、ごめん、浮かれた妄想が。忘れて。本棚共有できて、それはそれで楽しいかもね」
先輩が咳払いしてから気を取り直したように笑った。
「そ、そうですね」
「うん。お菓子食べる? 喉渇いたでしょ」
先輩が立ち上がって、机に置いたままだったお茶とお菓子を取ってきてくれる。
先輩は妹がいるらしいけど、弟もほしかったんだろうか。
俺も一瞬、先輩が俺のお兄さんだったらっていう想像をしてしまって、うわ、と赤面しそうになった。
それはちょっと、困るかもしれない。先輩が家にいてリビングでテレビとか見てるの?
どうしよう、テレビじゃなくて先輩見ちゃう自信がある。
でも、お互いが好きな本を一緒の本棚に埋めてくって考えたら、絶対楽しいな。
俺が脳内で妄想を繰り広げていると、先輩はすっかりいつもの顔に戻ってお茶を飲んでいる。
コップを勧めてくれたので、お礼を言って受け取った。顔が熱かったから、冷めたお茶がちょうどいい。
「脱線したけど、何かあったら話してほしいっていうのはほんとだから。俺じゃなくても、誰かに話すと楽になることあるし、一人で悩まない方がいいよ」
「はい。ありがとうございます」
話していたら、もうすっかり気分が晴れていた。
先輩が俺よりも年上だってことを実感する。
話してみてよかった。頼りになるっていうか、年上の包容力を感じて安心する。
けど、同時にそう感じるのは先輩だからなのか、同じことを誰かに言われても同じように感じるのか、どっちなんだろう。なんて思った。
そんでそう思う俺は、どっちだったらいいと思ってるんだろう。
考える俺の横で、先輩がスマホの通知を見て口を開いた。
「さっきの子が、ドバイチョコ見せてくれるって。明日もしもらったらみずきの分もとっとくね」
「……なんでしたっけ、カダ?」
「カダイフ」
先輩はしっかり覚えたらしい謎の呪文を口に出す。
「もらえなかったら、俺がバレンタインに用意するよ」
「手に入りますか?」
「わからん。全てが謎に包まれてる」
「気になるんで、俺も探してみます」
「うん、持ち寄ったお互いのカダイフを戦わせよう」
「チョコの話ですよね……?」
カブトムシみたいなこと言ってません? と堪えきれなくなって俺が笑う。
先輩も画面を見ながら笑っていた。
さっきの答えはまだわからないけど、一つだけはっきりしていることがある。
自分一人でじゃ、こんなに早く笑えなかったなって。
おこがましい? さすがに調子に乗りすぎた?
俺がショックを受けて固まったら、先輩は急に表情を和らげてじっと見つめてきた。
「みずきが弟だったら、俺溺愛しちゃう自信あるから困る」
「は、はい?」
「同じ家の中にいたらヤバいでしょ。みずきのことずっと抱えて歩くよ、俺」
「せ、先輩……?」
「あ、ごめん、浮かれた妄想が。忘れて。本棚共有できて、それはそれで楽しいかもね」
先輩が咳払いしてから気を取り直したように笑った。
「そ、そうですね」
「うん。お菓子食べる? 喉渇いたでしょ」
先輩が立ち上がって、机に置いたままだったお茶とお菓子を取ってきてくれる。
先輩は妹がいるらしいけど、弟もほしかったんだろうか。
俺も一瞬、先輩が俺のお兄さんだったらっていう想像をしてしまって、うわ、と赤面しそうになった。
それはちょっと、困るかもしれない。先輩が家にいてリビングでテレビとか見てるの?
どうしよう、テレビじゃなくて先輩見ちゃう自信がある。
でも、お互いが好きな本を一緒の本棚に埋めてくって考えたら、絶対楽しいな。
俺が脳内で妄想を繰り広げていると、先輩はすっかりいつもの顔に戻ってお茶を飲んでいる。
コップを勧めてくれたので、お礼を言って受け取った。顔が熱かったから、冷めたお茶がちょうどいい。
「脱線したけど、何かあったら話してほしいっていうのはほんとだから。俺じゃなくても、誰かに話すと楽になることあるし、一人で悩まない方がいいよ」
「はい。ありがとうございます」
話していたら、もうすっかり気分が晴れていた。
先輩が俺よりも年上だってことを実感する。
話してみてよかった。頼りになるっていうか、年上の包容力を感じて安心する。
けど、同時にそう感じるのは先輩だからなのか、同じことを誰かに言われても同じように感じるのか、どっちなんだろう。なんて思った。
そんでそう思う俺は、どっちだったらいいと思ってるんだろう。
考える俺の横で、先輩がスマホの通知を見て口を開いた。
「さっきの子が、ドバイチョコ見せてくれるって。明日もしもらったらみずきの分もとっとくね」
「……なんでしたっけ、カダ?」
「カダイフ」
先輩はしっかり覚えたらしい謎の呪文を口に出す。
「もらえなかったら、俺がバレンタインに用意するよ」
「手に入りますか?」
「わからん。全てが謎に包まれてる」
「気になるんで、俺も探してみます」
「うん、持ち寄ったお互いのカダイフを戦わせよう」
「チョコの話ですよね……?」
カブトムシみたいなこと言ってません? と堪えきれなくなって俺が笑う。
先輩も画面を見ながら笑っていた。
さっきの答えはまだわからないけど、一つだけはっきりしていることがある。
自分一人でじゃ、こんなに早く笑えなかったなって。
