同じ電車の男子高校生が気になる

「――実は、ちょっとへこんでたんです。昨日、クラスの友達に悪いことしちゃって」

 自然に話ができた。
 俺が打ち明けたら、先輩はうん、と頷いて、俺にベッドの前に敷いてあるラグに座るかと聞いてくれる。
 クッションを置いてくれたのでお礼を言って腰掛けた。先輩が俺の隣に座って、二人でベッドによりかかると、いつもの電車にいるときと同じ並びになってほっとする。

「前田って、時々電車に乗ってきてた奴です。同中だったんで」
「ああ、みずきって呼んでた友達」
「クラスの奴に聞かれたとき、もっと先のことちゃんと考えて答えなきゃいけなかったって後悔しました。前田に嫌な思いさせちゃったから」
「うん」

 ちょっとずつ昨日の話をした。
 昨夜はずっと思い悩んでいたけど、声に出して話したら少しずつ気持ちが整理されてくる。
 先輩は俺の話を真剣に聞いてくれた。途中で遮ったり考えすぎって笑うこともなくて、最後までちゃんと耳を傾けてくれる。そうしたら、不思議なくらい曇っていた感情が晴れていく。

「ありがとうございます。なんかすっきりしました。前田にはまた明日謝ってみます」
「うん。大丈夫だと思うよ。前田君は」
「え?」
「その西野? って奴より明らかみずきの方が性格いいから。心配しなくても前田君とはすぐ元に戻る」
「……そうですかね」

 先輩は西野を知らないから贔屓目なんじゃないかと思ったけど、きっぱりと言われると安心できるのも確かだ。

「みずきはちゃんとしてる。急に文句言われても怒らないで真剣に考えてるし、相手の立場に立って悩めるのはみずきのいいところだよ」

 先輩は普段の会話みたいな飾らない抑揚で、はっきりそう言ってくれた。

「……ありがとうございます」

 胸に引っかかっていたものがぽろっと剥がれたような気がした。
 じわっと胸に広がったのは、俺のことをわかってくれている人がいるって感じた喜びみたいなものだと思う。
 そしてその相手が先輩で、俺は嬉しいと思うんだ。

「なんかあったらまた話して。いつでも聞くし、みずきが元気ないの寂しいし」
「はい。ありがとうございます」

 自然に綻んだ顔で頷くと、先輩は俺の頭を撫でてくる。
 よしよしと、元気づけるような手つきで髪をふわふわ撫でられて、心もふわっと嬉しくなったけどちょっと気恥ずかしい。

「えっと、先輩は妹さんがいるから、年下の扱いに慣れてるってことですね」
「え? ……あ、うん。うんそうかな。妹いるから、つい頭撫でちゃうんだよね」

 先輩が一瞬きょとんとした後、それそれと同意してくる。

「そっか……俺兄弟いないので、こういうの慣れなくて。でも嬉しいです。兄がいたらこんな感じなんですかね」
「兄……は、ちょっと困るな」