願いのその先



――「こんな暑いのに、お花に水やりありがとうっ」

その時。

背後から、花の妖精のような可愛らしい声がしたかと思えば、薄いピンクのなにかが太陽から私を遮った。

声だけで予想がつき、ゆっくりと振り向く――

「あ……有坂、さん」

夏目(なつめ)さん、だよね?」

有坂さんの笑顔が私1人だけに向けられている状況に、同性の私でもドキッとしながら頷く。

そこで気づいた。

私は今、有坂さんのらしき日傘の中にいる、ということに。

すると、それに気づいて有坂さんが口を開く。

「窓から覗いたら、中庭にいたからっ。ここ、日陰全然ないからだいじょうぶかなーって」

「今日、特に暑いから……だいじょうぶじゃなかったかも。ありがとう」

わざわざ久保さんのグループとの会話を中断してまで、私を気にかけてくれたらしい。

その事実にも頬が緩むと、有坂さんは「えへへ、どういたしましてっ」と笑う。