「チッ、チッ、チッ(兄ちゃん、こいつ、誰)」
「ピッ、ピチュッ(こいつ、何?)」
こらこら、お前たち。
この子は俺らの、たぶん弟で可愛い末っ子だからな。
こいつ、って言っちゃ駄目だぞ。まあ、俺も言ってたけど。というかずっと一緒の巣穴で暮らしてたのに覚えてないの?
そう教えてやると改めて興味を持ったらしく、皆が末っ子にちょっかいをかけ始めた。
(末っ子、弟)
(末っ子、大きい)
(弟、かわいい……?)
(末っ子、遊ぼ)
いっせいに鳴いたりつついたり首をかしげたり羽や尾羽をパタパタさせたり、すり寄る者や突進する者、よじ登ろうとする者。
まだちょこっと産毛が残る皆のその愛くるしい姿に、毒気を抜かれたのか驚いたのか、末っ子は固まったまま動かない。ぷぷっ。こっちも可愛いなぁ。
おっと、また睨まれた。でも今のは照れ隠しでしょ、お兄ちゃんにはまるっとお見通しだぜ。
「ヂヂヂヂッ、ピイイイッ(危ない、隠れて!)」
突然上空から、パパとママの警戒の鳴き声が響き渡った。弟妹たちはさっと茂みに隠れたり、木の枝に飛び移り姿を隠す。
ぽかんとしていた俺は、無理やり末っ子に尾羽を引っ張られ、そのまま藪の中へと突っ込んだ。
え、何。どうしたの?
パパとママがすごい速さで飛び回ってる。
さっきまで俺たちがいた場所の近くには、ネズミ、いや、リスのような動物の姿があった。どちらにしろ雛鳥の俺よりかなり大きい。
その動物に向かってけたたましい威嚇音を発し、何度も急降下しながらの体当たりや、くちばしでつつく攻撃を繰り返すパパとママ。あ、助太刀に来てくれた鳥もいる。かっこいいー!
そうして、しばらくするとリスみたいな動物は退散したのだった。
***
「チュッ、チチッ(もう大丈夫だよ)」
警戒飛行を終えて地面に降り立ったパパの一声に、皆が飛んで戻ってくる。
ああ、びっくりした。
もしかしてちょっと危なかったのかな。俺たち、今の動物に捕食されかけてた?
まだ上手く飛べない俺は、ぴょんぴょん跳ねながら皆のもとへと近づいてみる。
弟妹たちの羽づくろいをしたり、ごはんを与えていたパパとママが動きを止め、じっと俺のほうを見た。……うわ、緊張する。
「ぴ、ぴぃ」
「チュッ(もう怖くないよ)」
そう言って、くちばしで俺の頭や首まわりの羽づくろいをしてくれるパパ。
やばい。くすぐったさが嬉しくて、泣きそう。
俺は一度巣穴に取り残され、ごはんをもらえず見捨てられた雛だ。もう二度と家族の一員には戻れないかも、と不安だった。でも違ったみたい。
ほかの弟妹同様に口移しでごはんを与えてくれるママ。
どうしよう、めちゃくちゃ嬉しい。
はっ、そういえば末っ子はどこだろ?
あ。俺の後ろの少し離れた場所からこっちを睨……見てる。
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