うりゃっ、と木の上のほうにあった巣穴からかっこよく飛び立った(つもりの)俺は、実際は飛ぶというよりも、ふらふらと落下して藪の中にすぽんとはまった。
助けてー、誰かー!
呆れたような、ため息っぽい音のあと、誰かが俺の尾羽を引っ張って救出してくれる。あ、末っ子じゃん。ありがとー。さすが俺の弟雛、お前だけだよ信じられるのは。
「ぴぃ」
ふと、羽毛をくすぐる爽やかな風と、心地良いやわらかな日差しに気づく。
ゆっくりと見回せば、水分を含んだ植物や土の匂い、さわさわと風でこすれる葉や草の音、いろんな鳥や虫たちの声、キラキラと揺れ動く木洩れ日の光。そして背の高いたくさんの樹木。
……たぶん森の中だよな、ここ。
見上げた青空がめちゃくちゃ高くて遠い。
あと、生い茂る葉っぱのせいで狭い。
はるか頭上の葉っぱを目でたどり、振り返った俺の前にそびえ立つのは、古い大きな木。
そのかなり上のほうに空洞の入口が見える。
……うん。あそこが、俺らの巣穴だったんだなぁ。暗くて狭いけどあったかくて、なかなか快適な住処だったよ。
さらば、最初のおうち。
今日からはこの広い世界が俺の新たなフィールドだ!
感慨にひたっていると、先に巣立ったはずの弟妹たちが低く飛びながら近寄ってきた。
えっ、まだ巣穴の近くにいたのかお前たち。
しかも、どうやら木の上から落下飛行した俺を心配してくれてるっぽい。
うわぁ、ごめんよー。てっきり皆に置いてかれたと思って実はちょっぴり恨んじゃったよ、俺。だって、さみしくて悲しかったし。
そういや、巣の外からたまに鳴き声とか聞こえてたような。
数日ぶりの再会だけど、皆、元気してた?
おおっ、鳴き声が「ぴーぴー」から「ちちゅ」や「ぴちゅ」や「ちっ、ちっ」に進化しつつある。
すごい、ちゃんと成長してる。俺まだ「ぴーぴー」なのに……。
まあいいや、きっとすぐに追いつくもんね。
って、こら!
久々の家族とのふれあいを邪魔したら駄目だぞ、末っ子。お前の兄や姉たちを睨んだり威嚇したりしてどうする。
ああもうっ、お兄ちゃんの目の前を翼でふさごうとするんじゃない。皆の姿が見えなくなるだろっ。
俺のまだまだちっちゃなくちばしで教育的指導(つっつき)を食らわすと、末っ子がジロリと睨んでくる。え、今のは俺が悪いの?
「ピッ(兄ちゃん)」
「チッ(遊ぼ)」
「ぴぃ?」
おおおっ、初めて弟妹たちの言葉が聞こえたよ!
今まではパパとママも含め、何となく感情っぽいのが伝わるだけだったのに。もしや俺、進化(成長)してる?
嬉しさで感動していると、またも末っ子のほうから呆れたようなため息が。
鳥って、ため息とか吐けるんだね。なぜか俺にはできないけど。
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