結論から言うと、羽柴たちのチームは負けた。
何せ相手は全国上位の超強豪だ。それはもうボコボコにされた。
まるで漫画に出てくるかませ犬みたいに、残酷なまでの力の差を見せつけられて、でもここは漫画の世界じゃないから奇跡は起きなかった。
一条はその様子を、一番前の席に座ってずっと見ていた。
周りの観客が「ま、こんなもんだろ」と呟いて帰り支度を始めても、圧倒的な点差に敵も味方も流れ作業みたいな態度になっても、絶対に目を逸らさなかった。
正確に言うと、羽柴だけを見つめていた。
どんなに点を取られても、周りの奴らがやる気をなくしても、あいつだけは、あのでかい声を張り上げて、最後まで走り続けていた。
泥だらけになって、必死になって、笛が鳴る最後の最後まで、ずっとボールを追いかけていた。
試合が終わり、整列が済んで選手も観客も散り散りになっていくグラウンドで、いつまでも立ち尽くしている男の震える背中を、その姿をひとつも取りこぼすまいと、一条は目に焼き付けた。
家に帰ってから、昔描いた漫画を読み返してみた。ああ、これは選考落ちするのも仕方ない、と思えるほどひどい出来だった。
描いた当時はかっこいいと思っていたが、純日本人の主人公を何の意味もなくオッドアイにしたのは失敗だった気がする。
何より、キャラ造形がひどい。
主人公はひたすら正しくて、ライバルはただ嫌なだけの奴で、いい奴か悪い奴かしかいない世界で、完璧美少女のヒロインは当然のように主人公に恋をする。
衝動的にページをビリビリに引き裂きたくなって、すんでのところで思いとどまった。作品は稚拙だが、オッドアイにはロマンがある。これは十年後くらいにリメイクすることにして、そっと机の引き出しにしまう。
――今描きたいものは、これじゃない。
一条は描きかけの設定案を破ってぐしゃぐしゃに握りつぶすと、ノートを引っ掴むように机に広げる。
シャープペンの芯が、紙に触れた瞬間にパキッと音を立てて折れた。構わず、芯を繰り出してまた線を引く。また折れる。頭の中にあるものに、右手の動きが追い付かない。
今まで真っ白だったノートが嘘のように、キャラクターの感情が溢れ出してくる。チート能力も、選ばれた才能も持たない、奇跡を巻き起こすこともない。
そんな等身大のヒーローを、思うままに描き続けた。
