「よう、熱血主人公」
「おいおい……」
月曜日の放課後。教室に現れた羽柴にそう声をかけると、照れたような苦笑が返ってきた。
「漫画の参考にはなったか?」
「まぁ、ぼちぼち」
「そっか。ならよかったよ。多分次で終わりだからさ」
「え?」
「次の相手。聖峰なんだよ」
「セイホウ?」
「知らねーか。全国常連の学校。一昨年は優勝してる」
そう言われるとなんとなく聞き覚えがあった。テレビのスポーツニュースで見た気がする。
「なんだよ。急に弱気じゃん」
「弱気とか強気とかのレベルじゃないんだって。マジで別世界だからさ」
へらりと笑って見せるその態度が、妙に癪に障った。
「見にくんなよ。かっこ悪いとこ見られたくねぇんだ」
「……なんだよそれ」
「……ごめんな。やっぱ俺、熱血主人公にはなれねーわ」
羽柴は一条と目を合わせず、代わりに手元のノートを見つめていた。どこか眩しそうにも見える目で。
「……俺だって、『先生』になれるかわかんねーよ」
「え……?」
「でも、描く」
その言葉に、羽柴は目を見開く。
「試合、観に行くからな」
「……はは。お前の方こそ、実は熱血主人公だよな」
いつもの軽い笑顔じゃなく、ひどく不器用な笑い方だった。
「見に来るなら勝手にしろ。……俺も、やれるだけはやってみるよ」
