不良生徒とは付き合えません!

 僕は佐倉翔馬(さくらしょうま)、山積みだった仕事がある程度片付いたので気晴らしに夕日が白い校舎を紅く照っている校舎の周りを見回りという体で歩いているとある生徒と目が合ってしまった。
 「あ?」
 「あっ」
 喧嘩だ、この学校じゃ珍しくない。というのも学校一の不良と言われている鹿島蓮翔(かしまれんと)を筆頭として校内では不良生徒が増えている。校則も無視してピアスを何個も開けてるみたいで髪も派手に金髪にしている。しかも今、目が合ったのがその鹿島くんだった。
 「だ、大丈夫?怪我してる………ほら、絆創膏してあげるからおいで」
 「うっぜー、余計なお世話だわ。てか先公のくせにこっちより先に俺の心配なんだな」
 「うっ、確かに」
 鹿島くんに気を取られていたが隣で倒れている子を先に手当てするべきだった。
 「とりあえず一緒に保健室来なさい、君は山田先生に消毒とか」
 「大丈夫でーす、せんせーさよーなら」
 そう言って鹿島くんは怪我をしたまま校門まで歩いていこうとしたため僕は慌てて止めに入った。
 「そんな怪我で外歩いちゃダメ、強制連行です」
 「チッ、触んな」
 僕は怪我してなさそうな左腕を掴んで連れていこうとするも鹿島くんに睨まれ手を弾かれた。
 「ううっ、鹿島てめぇ覚えとけよ!」
 気づくとさっきまで気絶していた生徒が鹿島くんを睨みながら僕の腕を抜けて走って帰ってしまった。
 「ちょっと!」
 「じゃ、俺も帰るわ」
 また鹿島くんはそう言って帰ろうとするので服を僕は引っ張る。
 「ダメ!じゃあ今すぐ手当てするからじっとしてて!」
 「だから余計なお世話だっつってんだろ!」
 僕の手を力づくで払おうとするが僕は気にせず小物入れからウェットシートと絆創膏を取り出す。
 「いっ……」
 「あ、痛かった?ごめんね、でも我慢してな」
 僕は軽くウェットシートで傷口の周りを拭き絆創膏を貼る。
 「よし、これで大丈夫!」
 「………いらねーよこんなの」
 そう言って鹿島くんは絆創膏を剥がそうとするので僕はその手を握る。
 「触んな」
 「ダメ、絆創膏剥がすでしょ」
 「いらねえから」
 「いるの!せめて家帰るまで剥がしちゃダメだよ!」
 「あーはいはい、わかったよ。かえりまーす」
 鹿島くんはまた僕の手を弾き、渋々カバンを持って帰っていった。
 そんな鹿島くんを見送っていると後ろから声をかけられる。
 「佐倉先生、絆創膏持ち歩いてらっしゃるんですね」
 「あ、山田先生。どうされたんですか?」
 「いや、喧嘩している子がいるって聞いたもんで来たんですけど佐倉先生が対応してくださったんですね、ありがとうございます」
 「気にしないでください、僕も散歩してたら見かけたので、この学校不良生徒多いでしょ?だからなにかあった時のために持ち歩いてるんです」
 「そうなんですねー、では私もうそろそろ上がりますね」
 「はい、お疲れ様です」
 僕は山田先生と一緒に職員室へ戻り僕は残っていた仕事に手をかけ始めた。

 そして夜の八時。
 「佐倉先生、まだ残るんですか?」
 「あ、はい。今のうちにテストの採点しとこうかなって、明日何があるかわからないですし」
 「なるほど、では俺はこの辺で。また明日」
 「はーい、お疲れ様です」
 僕もすぐに仕事片付けないとな。でもテストの採点で今日は終わりそう。
 見回りしなかったらこんなのもう終わってたんだけど見回りしたからこそ鹿島くん達の対応もできたんだしそれでいいや。
 「あ、鹿島くんのだ」
 僕は鹿島くんのクラス担任でもあり校長先生からもよく鹿島くんのことを任されている。
 (うーん、白紙………)
 テスト中ずっと寝てたからな、こんなので進級できるのか不安だ。
 「よし、帰るか」
 テストの採点も残っていた仕事も全て終わり時間もすっかり十時を過ぎていた。
 (………ん?あれは……)
 帰り道、コンビニの前で見覚えのある子達がたむろしているのを見かけた。
 「ちょっと!鹿島くん達!高校生はもう帰る時間だぞ!夜遊びしちゃダメです」
 「あ?うるせーよ、口出ししてくんな」
 「テストもまともに受けてないでしょ君達!そのくせ夜遊びなんて………」
 僕が夜遊びに対して説教をしていると突然しゃがんでいた鹿島くんが立ち上がって僕に近づいてきた。
 「佐倉?だっけお前」
 「さ、佐倉先生です」
 「………」
 (ち、近い………)
 こんな間近に来られると恥ずかしい、説教しておいてそういうのもあれだけど
 「なんで俺らに余裕ぶっこいた顔で話しかけれるん」
 「えっ?」
 「あの学校の先公クソビビってるからさー、お前みたいなの珍しいんよね」
 「そ、そうなんだ。でも僕は君のクラス担任だし」
 僕が段々と近づいてくる鹿島くんを手で押しのけながらまた後ろの子達にも説教しようとすると鹿島くんが僕の前髪をいじりながらまた近づいてくる。
 「それ関係あるの?」
 「大ありだよ!君は喧嘩しすぎだし不安なんだよ」
 「……心配なん」
 「心配に決まってるじゃん、大切な生徒が傷ついてるのなんて嫌だよ」
 「ふーん、まあいいや」
 ふと後ろを見るとさっきまでいたはずの生徒達がこつ然と姿を消していた。
 「あれっあの子達は」
 「帰らせたよ、佐倉先生。一緒に帰りましょ」
 「え、一人で帰れるでしょ」
 「あそこに察いるんですよ、大切な生徒が補導されるよりマシでしょ」
 「ああ……それなら」
 仕方なく僕は鹿島くんの付き添いとして家まで送ることにした。
 「あれ、君達高校生?この時間になんで外いるの」
 「え、あ僕大人です、これ免許証」
 「ありゃ、これは失礼。夜道は暗いですからね、お気をつけて」
 (結局警察いても無駄だったみたいだ)
 「先生童顔ですよね、そのくせ小さいし」
 「それは……」
 「でもかわいいじゃないですか」
 「はあ!?そんなかわいいとか好きな子に言ったらどうですか、僕二十七ですよ」
 「え、もっと若いと思ってた」
 「アラサーのおっさんだよ」
 僕は小柄で童顔なせいでよく子供に間違われる。学校にいると生徒に見られ、外ではお酒を買う時絶対に年齢確認される。
 それに比べて鹿島くんは高身長で僕とは頭一個分くらい違う。高校生とは思えない。
 「ていうか先生って歩きで来てるんですか?」
 「そうだよ?家近いし」
 「ふーん」
 「あ、ていうか絆創膏剥がしてないんだ」
 「あ?剥がすなつってたのにそんなの気にするんだ」
 「だって絶対剥がすタイプじゃん、鹿島くんは」
 「ま、当たり」
 そう呟いた鹿島くんはスマホを片手に信号を渡る。
 「歩きスマホは危険ですよ」
 「いちいちうるさい」
 「うるさくありません」
 鹿島くんはそう言いつつもポケットにスマホをしまい歩き出す。
 (意外と素直なんだろうか)
 「あーてか先生の下の名前って何?」
 「え?翔馬だけど」
 「覚えとくわショマちゃん」
 「んなっ、佐倉先生!あだ名なんてダメです」
 「なんでダメなの?」
 「それは僕と君は教師と教え子だから……」
 「ふーん?じゃあ恋人になる?」
 「………えっ今なにか言った?」
 聞き間違いじゃなかったらすごいこと言われたような気が………
 「ん?なんでも、じゃ俺ん家ここだから帰るねバイバイ」
 「……バイバイ」
 一体なんなんだこの子………

 今日はいつも通りゆっくりご飯を食べれる……と思っていた。
 「……鹿島くん、また喧嘩したの」
 「うん、怪我しちゃったから絆創膏ちょうだい」
 「あのねぇ、僕は保健医じゃないから保健室行きなさいよ」
 「えー佐倉先生のが優しいっしょ」
 「お金取ろうか?」
 「え、いいの!?」
 鹿島くんは本気にして財布を取り出したので慌てて止める。
 「もう喧嘩しちゃダメだよ」
 「なんで?」
 「大切な生徒が傷ついてるの見たくないって言ったでしょ」
 「ふーん?」
 「それに生徒を守るのも教師の役目なんだから守らせてください」
 僕が若干叱り気味にそう伝えれば鹿島くんはフッと笑い僕の顔に手を伸ばす。
 「じゃあ先生のことは俺が守ってあげますよ」
 その言葉を聞くとドキッとしてしまった。そんなこと言われるなんて初めてだった。
 「なっ……!と、とにかく喧嘩はやめなさい!これ以上怪我したらどうするの」
 「じゃあ怪我しないように喧嘩するね!」
 「だからぁ……」
 不良とはいえノリがものすごい軽い気がする。もっと怖い感じだと思ったけど案外チャラいのか?でも結局意外といい子だよな。
 「佐倉先生、ちょっといいかな」
 「はい?なんでしょう校長先生」
 僕は校長先生に呼ばれ鹿島くんを外に出して校長室へと入っていく。
 「鹿島くんのことなんだがね………」
 (まさか鹿島くんと距離近いから怒られるんじゃ……)
 そんな心配をしていたら校長先生の口からは思ってなかったような言葉が出てきた。
 「鹿島くん、君に心を許してるみたいじゃないか、彼の家少し事情があってだな、時間があれば相手をしてやってくれないか?」
 「……えっ?」
 てっきり離れなさいとか言われるのかと思いきやもっと相手をしてやって?
 「いやね、言いづらいんだけど彼の両親ね、そのネグレクトなんだよ。だからさ、不良生徒になっちゃって、呼び出しても来ないし彼ももう諦めていて……」
 「………」
 (鹿島くんにそんな事情が……)
 それなら僕も支えなくてはいけない気がする。教師としてできることを鹿島くんにしてあげたい。
 「ただ鹿島くんその喧嘩とか多いだろう、そのせいで先生方も困ってるから君なら彼をどうにかしてくれるのではないかとも思っているんだ。だから頼んだよ」
 「はい、頑張ります」
 僕は鹿島くんをしっかり守ることはできるのだろうか、少し心配はあれど鹿島くんのために気を引き締めて行こう。