五月。ごわすの小指を埋める。

「っっっきゃああああああああっっっっっ」
 マンドラゴラかと思ったら、マウントゴリラ女だった。
「いっ、いいっっ、、生きてるっっっ」
 私の胸の前で、うねうね、くねくね、ぬねぬねと蠢いている、さつまいも(暫定)を指さして、叫声を上げた。
 虚を突かれた私はフリーズ。そこに、嵐の前の静けさ、波風の前の微風がブリーズ。
 流行性観賞。さすがのインフルエンス。
 目と目と目と目。止めどない、目と目。
 視線と視線で、がんじがらめ。
 みんなが。私を。見ている。
 蟻並みの心臓を。好奇の目。色眼鏡の焦点が。じきりじきりと、締め上げる。
 一瞬にして、注目のマトン。
 ストレイシープ達が。羊が一匹。羊が二匹。
 シープは複数形でもシープ。なんて、嘘だ。
 羊の群れは、狼を殺す。
 無個性の無辜の群れが、無実の私を断罪する。
 無理だ。無理無理。たち眩む。
 耐用視線数を超えて、昇華滅却。
 蒸発。姿暗む。遠のく、い、し、き、
「いっ、いいっっ、、いもいもっっ、、いもっ。いもいもっっ、、いもっ」
 寝首にラムチョップ、マウンテンゴリラのドラミング心臓マッサージで、逆に目を覚ました。
 羊は群れる。羊は美が好き。
 がんじがらめの視線は、解いてみれば、ほとんどが私を見ていなかった。
 ほとばしる血潮が引いていく。
 冷静沈着。冷やし中華はじめる。
 現実逃避から堅実投資へ。
 まずは芋を、ゴリラに投げる。
 さすゴリ。女バスの握力。ハンドリングはお手のもの。ナイスパスキャッチ。
 私はクールにこの場をおさめるため。クールクール。丸まる。
 ダンゴムシ。
 私はダンゴムシです。じめじめ。無視してください。無視無視。団子なんて無視して、花を見てください。調子に乗ってる鼻っ柱を。
 まるまる丸投げ。後は、頼んだ。ゴリラ天狗。
「このイモっ。生きてるんっ、だけどーっ」
 若干の後ろめたさの中、横目に上目で、彼女を見上げる。
 民衆を導く自由の女神のごと、高らかに掲げる右手には、ヴィレンドルフのヴィーナス。
 いや、これは、ちょっと分かりにくいか。ヴィレンドルフのヴィーナス。なんて、言われてもなんのことやら。
 うーん。
 さて、どう言えばいいのか……。
 ああ。
 セクシー大根。
 いや、この場合は。
 セクシーさつまいも。か。