海主・碧李家の領は、綺羅ノ国の北西、海に面した地にある。都からは、輿や馬、牛車を使っても三日ほどかかる。
久遠は燦の従者として碧李領に向かう一行に同行していた。
(先日の大嵐で、崖崩れが起こるなんて)
都から離れた碧李領で崖崩れが起こったという報せが入ったのは、久遠が自分の過去について燦に打ち明けた日の、翌朝のことだった。
祭祀の日の大嵐が都を襲った後、そのまま碧李領にも被害が及んだらしい。都の民に向けては触書を出し、予め嵐に備えていたものの、碧李領のほうは手薄だった。
家を失った民や孤立した集落もあると聞く。一刻も早く天の怒りを鎮めてほしいという民の願いを聞き入れ、燦を始めとした五主家は碧李領に向かった。
各主家の当主たちは相変わらず、「偽の后を立てて祭祀を行ったから、天の怒りを買った」と燦を責め立てている。その結果、花緒を燦の正式な后とせよという意見が、合議での決定事項となった。
燦もそれを拒まず、このたび碧李領において燦と花緒の婚礼を執り行うのだそうだ。
(慣れない旅先では隙も生まれる。花緒様を狙う機会も増えてしまう)
花緒を守ると久遠に約束した燦は、碧李領への十六夜家の同行を禁じた。燦の命令はありがたかった。……とはいえ、まだ油断はできない。
十六夜家の真意は分からないものの、祖父と父の会話の中では「久遠を燦の后に」という話も出ていた。もしもそれが祖父たちの本当の望みであるならば、燦と花緒の婚礼は十六夜にとって都合が悪い。こっそり碧李領まで付いて来て、何かをしでかさないとも限らない。
これを虫の知らせというのだろうか。久遠はどうしても、碧李領で何か起こるのではという不安を拭えないでいた。
碧李領には、激しい雨が降り続いていた。
到着後、休む間もなく燦と花緒は婚礼の準備に入る。婚礼の参列者も着替えを済ませ、次々に海に面した高台に集まって並んだ。
(嵐の日に、こんな開けた場所で婚礼?)
久遠は燦の従者として碧李領に向かう一行に同行していた。
(先日の大嵐で、崖崩れが起こるなんて)
都から離れた碧李領で崖崩れが起こったという報せが入ったのは、久遠が自分の過去について燦に打ち明けた日の、翌朝のことだった。
祭祀の日の大嵐が都を襲った後、そのまま碧李領にも被害が及んだらしい。都の民に向けては触書を出し、予め嵐に備えていたものの、碧李領のほうは手薄だった。
家を失った民や孤立した集落もあると聞く。一刻も早く天の怒りを鎮めてほしいという民の願いを聞き入れ、燦を始めとした五主家は碧李領に向かった。
各主家の当主たちは相変わらず、「偽の后を立てて祭祀を行ったから、天の怒りを買った」と燦を責め立てている。その結果、花緒を燦の正式な后とせよという意見が、合議での決定事項となった。
燦もそれを拒まず、このたび碧李領において燦と花緒の婚礼を執り行うのだそうだ。
(慣れない旅先では隙も生まれる。花緒様を狙う機会も増えてしまう)
花緒を守ると久遠に約束した燦は、碧李領への十六夜家の同行を禁じた。燦の命令はありがたかった。……とはいえ、まだ油断はできない。
十六夜家の真意は分からないものの、祖父と父の会話の中では「久遠を燦の后に」という話も出ていた。もしもそれが祖父たちの本当の望みであるならば、燦と花緒の婚礼は十六夜にとって都合が悪い。こっそり碧李領まで付いて来て、何かをしでかさないとも限らない。
これを虫の知らせというのだろうか。久遠はどうしても、碧李領で何か起こるのではという不安を拭えないでいた。
碧李領には、激しい雨が降り続いていた。
到着後、休む間もなく燦と花緒は婚礼の準備に入る。婚礼の参列者も着替えを済ませ、次々に海に面した高台に集まって並んだ。
(嵐の日に、こんな開けた場所で婚礼?)

