火輪の花嫁 ~男装姫は孤高の王の夢をみる~

 眠っている人に触れると、その人の前途(みらい)を視ることができる、いわゆる先視(さきみ)の才である。

 久遠は覡としては見習い。才は未熟で、父や兄のように五主家に仕えて夢見をするほどの力はまだない。が、最近ではこうして自らの意思と関係なく、他人の夢の記憶が頭になだれこんでくるように視えることがあった。

 十六夜の夢見の才は、先視――つまり、「これから起こること」が見えるはず。
 久遠にはまだそれがよく腹落ちしていない。夢見の才を会得したという実感がない。

(だって、僕にとっての夢見は「先視」というより……相手の過去が見える感覚に近いかな。ほら、今も……)