「和暮は小賢しい。燦の后の座を得られれば、これから生まれる子が男児でも女児でも力を得られる」
「そんな……! 花緒様は、そんなことは考えておられないと思います」
「姫の意志など関係ない。和暮家の言いなりに過ぎぬ」
輝比佐は久遠をもうひと睨みすると、くるりと向きを変えてあっさり背中を見せた。
「お待ちください……! 碧李のご当主様、ご用件はなんでしたか?」
「様子を見にきただけだ。燦王に会えず残念だが、お前の顔を見られて良かった。ああ、そうそう。燦王には、次の祭祀までには后を決めてほしいと伝えてくれ」
――次の、祭祀。それはいつだろう。
半人前の覡だからと言い訳している猶予はない。もっと燦の夢を詳しく視なければ。
久遠はぼんやりと立ち尽くしたまま、輝比佐の背中を見送る。冷たい夕風が吹き、木に立て掛けてあった箒が倒れて音を立てて転がった。
「そんな……! 花緒様は、そんなことは考えておられないと思います」
「姫の意志など関係ない。和暮家の言いなりに過ぎぬ」
輝比佐は久遠をもうひと睨みすると、くるりと向きを変えてあっさり背中を見せた。
「お待ちください……! 碧李のご当主様、ご用件はなんでしたか?」
「様子を見にきただけだ。燦王に会えず残念だが、お前の顔を見られて良かった。ああ、そうそう。燦王には、次の祭祀までには后を決めてほしいと伝えてくれ」
――次の、祭祀。それはいつだろう。
半人前の覡だからと言い訳している猶予はない。もっと燦の夢を詳しく視なければ。
久遠はぼんやりと立ち尽くしたまま、輝比佐の背中を見送る。冷たい夕風が吹き、木に立て掛けてあった箒が倒れて音を立てて転がった。

