「どうやって? 以前、私と手を繋いで眠ったわよね? 燦とも同じようにしているの?」
「はい。父や兄は相手の手を握れば夢見ができるようなのですが、僕は自分も眠っていないと上手く夢見ができないみたいで。なので燦様の寝室で休ませていただいています」
「大丈夫なの? あなたは男ではなく、本当は――」
「花緒様!」
思わず、花緒の口を押さえる。久遠が本当は女であることを知っているのは、花緒だけだ。この会話を誰かに聞かれては困る。
「急に乱暴なことをして申し訳ありません……! あの時は、もう花緒様にお会いすることもないだろうと思って真実をお伝えしたのです。僕が女であることは、これからも誰にも言うつもりはありません。だから、お願いです」
「ええ……分かったわ。燦に知られていないのなら構わないの」
花緒の笑顔はぎこちない。これから自分の夫になるかもしれない相手が、男装した女と添い寝していると聞いて、嫌悪感を抱かない人はいないだろう。
「僕が燦様の夢見をするのは、望ましくありませんよね。僕の考えが足りませんでした。花緒様にも嫌な思いをさせてしまって……」
「謝ることはないわ! 燦のことだから、たとえあなたが夢見を拒んだとしても、耳を貸さないでしょう」
花緒は久遠の手を取って歩き始める。
池にかかった反橋の上まで来ると、目を細めて遠くの山の端を眺めた。
「……耀と燦とは幼馴染みだったの。和暮家の両親が、私を耀の后にしたいと考えているのは知っていた。だから私もそれに従ったわ。耀は優しくて大らかで太陽みたいな人だったけど、私の初恋相手は耀ではなく、燦だったのよ」
「え? そうなんですか!?」
「もう昔の話。いつの頃か、燦は突然、人が変わった。心を閉ざして誰とも深くかかわらなくなったの。物に当たったり、規律を破ったり、屋敷を飛び出してしばらく戻らないこともあったわ。何が彼を変えてしまったのか、今でも分からない」
今にも消え入りそうな声でそう言って、花緒は小さく息を吐いた。
花緒の話と燦の過去が、久遠の頭の中で一本に繋がる。
燦が急に変わったのだとしたら、その原因はあの夢の中での出来事に違いない。建物が燃える目の前で、燦の母が何者かに斬られた雪の日――しかし、花緒もその出来事を知らないようだ。
「はい。父や兄は相手の手を握れば夢見ができるようなのですが、僕は自分も眠っていないと上手く夢見ができないみたいで。なので燦様の寝室で休ませていただいています」
「大丈夫なの? あなたは男ではなく、本当は――」
「花緒様!」
思わず、花緒の口を押さえる。久遠が本当は女であることを知っているのは、花緒だけだ。この会話を誰かに聞かれては困る。
「急に乱暴なことをして申し訳ありません……! あの時は、もう花緒様にお会いすることもないだろうと思って真実をお伝えしたのです。僕が女であることは、これからも誰にも言うつもりはありません。だから、お願いです」
「ええ……分かったわ。燦に知られていないのなら構わないの」
花緒の笑顔はぎこちない。これから自分の夫になるかもしれない相手が、男装した女と添い寝していると聞いて、嫌悪感を抱かない人はいないだろう。
「僕が燦様の夢見をするのは、望ましくありませんよね。僕の考えが足りませんでした。花緒様にも嫌な思いをさせてしまって……」
「謝ることはないわ! 燦のことだから、たとえあなたが夢見を拒んだとしても、耳を貸さないでしょう」
花緒は久遠の手を取って歩き始める。
池にかかった反橋の上まで来ると、目を細めて遠くの山の端を眺めた。
「……耀と燦とは幼馴染みだったの。和暮家の両親が、私を耀の后にしたいと考えているのは知っていた。だから私もそれに従ったわ。耀は優しくて大らかで太陽みたいな人だったけど、私の初恋相手は耀ではなく、燦だったのよ」
「え? そうなんですか!?」
「もう昔の話。いつの頃か、燦は突然、人が変わった。心を閉ざして誰とも深くかかわらなくなったの。物に当たったり、規律を破ったり、屋敷を飛び出してしばらく戻らないこともあったわ。何が彼を変えてしまったのか、今でも分からない」
今にも消え入りそうな声でそう言って、花緒は小さく息を吐いた。
花緒の話と燦の過去が、久遠の頭の中で一本に繋がる。
燦が急に変わったのだとしたら、その原因はあの夢の中での出来事に違いない。建物が燃える目の前で、燦の母が何者かに斬られた雪の日――しかし、花緒もその出来事を知らないようだ。

