火輪の花嫁 ~男装姫は孤高の王の夢をみる~

 母のいない寂しさを紛らわせるために、幼い燦の頭の中で作り出した虚構であるとも言えなくはない。

(そんな中で、五主家の内から燦様の仇を探すなんて……)

 どうすればいいのか、見当もつかない。

 たとえば、久遠と燦が視た光景が事実だったとして。
 陽主の宝物を狙う動機は、どの主家にもある。

 遠い昔には対等だったはずの五主家の中で、日紫喜家が王として立ち、国を束ねる立場になったのだ。恨めしく思い、王位簒奪を考える家があっても不思議ではない。
 だが陽主に手を出せば、天の怒りを買うことは必至である。

 久遠は胸元の石をぎゅっと握る。
 燦は幼い頃から、この恐ろしい夢を何度も見続けてきたと言った。どんなに心細く、辛い思いをしただろうか。

 それなのに、燦はあえて久遠に夢見をさせ、過去と向き合っている。
 過去に真正面から立ち向かい、戦っている。

 久遠はいつだって、あの蔵の中での記憶を忘れてしまいたいと願っているというのに。

「……燦様。僕が役に立てるかどうかは分かりません。ですが、もしも燦様の夢で何か見えたとしたら、必ず燦様に伝えると約束します」
「そうしてくれ。相手が誰であっても絶対に隠すな。俺が前に夢見を頼んだのは、五主家と繋がりがないと聞いたからだ。お前を信じる」
「はい、約束します」

 久遠は、燦の目をまっすぐに見て答えた。