火輪の花嫁 ~男装姫は孤高の王の夢をみる~

 燦に抱き上げられたのは、目がくりっと丸く可愛い男の子だ。年は五、六歳といったところか。日紫喜家には前王である耀(よう)、新王の燦、更にその下に霖という名の弟がいるというのは、父から聞いて知っていた。

「ねえ、兄さま。この人、誰?」

 霖が、久遠を指差して燦に問う。久遠は急いで寝台から下りると、髪を整えながら霖に向かって頭を下げた。

「霖様。僕は十六夜久遠と申します。今日は燦様の夢見に参りまし――」
「うーん、なんだかひょろひょろしてて、兄さまとはちがうな。花緒姉さまみたい」
「霖様!? 僕はれっきとした男ですよ。花緒様と比べてもらえるのは嬉しいですが」
「ふうん。ねえ、兄さま! みんなが兄さまをまっています。夢見(・・)のお話を聞きたいんだって」
「こんな朝早くから、もう皆が集まったのか。すぐに行く。皆に伝えてくれ」
「はい、兄さま!」

 燦の腕から下りると、霖は間髪入れず部屋を飛び出していく。無邪気で可愛らしい。久遠の甥っ子たちとは大違いだと思ったが、口にするのは止めておいた。

「久遠、行くか。夢見の結果を聞きたくてうずうずしている当主様たちがお待ちかねだ」
「はい、すぐに準備します。あの……燦様、夢見の結果はどのようにお伝えになるのですか?」
「お前から聞いた通り、そのまま伝えるが」
「でも、結局どの方を后となさるのかはっきりしないですし……」
「心配するな。着替えが終わったらお前も来い。ああ、身支度をするなら隣の部屋を使ってくれて構わない。姿見がある」
「あっ、はい!」

 着替えを燦に見られずにすみそうで、久遠は胸を撫でおろした。