綺羅ノ国では、月に一度、祭祀が行われる。
王と后、そして五主家の宝物をひとところに集め、天に玉花を捧げる儀式だ。
燦王の后の代理として、前王・耀の后であった花緒が祭祀を行った際、天の怒りを買って嵐が起こったことは記憶に新しい。早く后を決めるようにと、合議の場で主家の当主たちが燦に迫り、激しい駆け引きが行われた。
あれから少なくとも、三月は経っている。
祭祀も二度、三度は行われたはず。
……にもかかわらず、一度も嵐は起こっていない。
一葉が桔梗姫の屋敷にやって来てから、雨が降ったことすらなかったような気がする。
(なぜなんだろう……)
以前、燦が言っていたように、嵐が起こるのは何かの偶然で、天の怒りとは関係ないのだろうか。それとも――。
(燦様が、正式に后をお迎えになったとか?)
もう三月も会っていない燦の顔を思い出し、一葉は小さく息を吐く。
碧李領で祖父と父が捕らえられた後、一葉は当面の間、久靄家に身を寄せることになった。当主である久靄大偉に連れられて、都には戻らず、直接久靄領に向かった。
碧李領から久靄領へは、海路を使うのが早い。だから陸路で都に戻る燦とは、そこで別れた。
十年ぶりに会う久靄家の祖父とゆっくり過ごして、また都に戻ってこい――別れ際に燦はそう言ったが、笑顔を返しただけで、言葉で「はい」とは言わなかった。
霧中の才を受けて記憶を取り戻したことにより、一葉は、自分がまごうことなき十六夜の一族であることを思い知った。
それに、燦に捕まった祖父が一葉に投げつけた言葉も耳に残る。
『――十年前の償いは、お前がしっかりとやってくれた』
蘇芳姫と香宵を殺めたのは祖父と父だ。だから一葉は心のどこかで、その罪は二人が負うべきだと思い込んでいた。しかしそれは違うのだと気付いた。
直接手を下したわけでなくても、一葉は十六夜家の罪を背負わなければならない。
一葉は日紫喜家の仇であり、燦の側にいることは赦されない。
だから一葉は久靄の祖父に相談し、密かに久靄家を出て、桔梗姫の屋敷に世話になることになったのだ。
王と后、そして五主家の宝物をひとところに集め、天に玉花を捧げる儀式だ。
燦王の后の代理として、前王・耀の后であった花緒が祭祀を行った際、天の怒りを買って嵐が起こったことは記憶に新しい。早く后を決めるようにと、合議の場で主家の当主たちが燦に迫り、激しい駆け引きが行われた。
あれから少なくとも、三月は経っている。
祭祀も二度、三度は行われたはず。
……にもかかわらず、一度も嵐は起こっていない。
一葉が桔梗姫の屋敷にやって来てから、雨が降ったことすらなかったような気がする。
(なぜなんだろう……)
以前、燦が言っていたように、嵐が起こるのは何かの偶然で、天の怒りとは関係ないのだろうか。それとも――。
(燦様が、正式に后をお迎えになったとか?)
もう三月も会っていない燦の顔を思い出し、一葉は小さく息を吐く。
碧李領で祖父と父が捕らえられた後、一葉は当面の間、久靄家に身を寄せることになった。当主である久靄大偉に連れられて、都には戻らず、直接久靄領に向かった。
碧李領から久靄領へは、海路を使うのが早い。だから陸路で都に戻る燦とは、そこで別れた。
十年ぶりに会う久靄家の祖父とゆっくり過ごして、また都に戻ってこい――別れ際に燦はそう言ったが、笑顔を返しただけで、言葉で「はい」とは言わなかった。
霧中の才を受けて記憶を取り戻したことにより、一葉は、自分がまごうことなき十六夜の一族であることを思い知った。
それに、燦に捕まった祖父が一葉に投げつけた言葉も耳に残る。
『――十年前の償いは、お前がしっかりとやってくれた』
蘇芳姫と香宵を殺めたのは祖父と父だ。だから一葉は心のどこかで、その罪は二人が負うべきだと思い込んでいた。しかしそれは違うのだと気付いた。
直接手を下したわけでなくても、一葉は十六夜家の罪を背負わなければならない。
一葉は日紫喜家の仇であり、燦の側にいることは赦されない。
だから一葉は久靄の祖父に相談し、密かに久靄家を出て、桔梗姫の屋敷に世話になることになったのだ。

