止めたいが、間に合わない。
火輪剣による一撃は、祖父の首を斬る寸前で――止まった。
(ああ……良かった)
燦は悔しそうな表情を浮かべ、火輪剣を下ろした。
祖父は目を見開き、腰を抜かして絶句している。
一葉は燦の元に一歩一歩近付いた。燦は剣を資人に渡すと、一葉に向き直る。
「燦様」
「……十年前の罪は、この者が償うべきだ。一葉に負わせたくなかった」
「私のことを考えてくださったのですね。ありがとうございます。祖父を……いえ、十六夜を赦してほしいとは申しません。ですが、祖父を斬っても何も変わりません」
「その通りだ。十年前の罪が明らかになった今、五主家が規律に従って十六夜を裁くべきだな。そうでなければ、次は俺が天の怒りを買うだろう」
燦は強張りながらも微笑む。一葉もそれに応えた。
祖父と父は、衛士によって連れて行かれた。しばらくは、ここ碧李領の牢に繋がれることとなるだろう。あの輝比佐のことだから、ぬかりなく二人を監視してくれそうだ。
大怪我を負った上に威風の才を使った和暮家当主も、花緒に付き添われて運ばれて行く。壊れた祭壇も片付けられた。先ほどまでの争乱が嘘のように、あたりは夜の静けさに包まれた。
(お母様、蘇芳姫。お二人の無念を、少しは晴らせたでしょうか)
一葉は夜空を見上げ、首に下げた月影の石を手に握る。
宝物と言うにはあまりにも見栄えが悪く、ゴツゴツとしたただの石。だが、今の一葉にとっては、この石以外に縋れるものはない。
祖父は最後まで、一葉を十六夜家の駒としてしか見ていなかった。
父もそうだ。兄の匠人が一葉よりも年上であることを考えれば、父は一葉が生まれるよりも前から妾を作っていたはずだ。一葉よりも先に産まれた妾の子に、十六夜家を継がせたい――だから、香宵と一葉を軽んじた。
一葉は初めから、愛されてなどいなかったのだ。
「結局、またずぶ濡れになってしまったな」
火輪剣による一撃は、祖父の首を斬る寸前で――止まった。
(ああ……良かった)
燦は悔しそうな表情を浮かべ、火輪剣を下ろした。
祖父は目を見開き、腰を抜かして絶句している。
一葉は燦の元に一歩一歩近付いた。燦は剣を資人に渡すと、一葉に向き直る。
「燦様」
「……十年前の罪は、この者が償うべきだ。一葉に負わせたくなかった」
「私のことを考えてくださったのですね。ありがとうございます。祖父を……いえ、十六夜を赦してほしいとは申しません。ですが、祖父を斬っても何も変わりません」
「その通りだ。十年前の罪が明らかになった今、五主家が規律に従って十六夜を裁くべきだな。そうでなければ、次は俺が天の怒りを買うだろう」
燦は強張りながらも微笑む。一葉もそれに応えた。
祖父と父は、衛士によって連れて行かれた。しばらくは、ここ碧李領の牢に繋がれることとなるだろう。あの輝比佐のことだから、ぬかりなく二人を監視してくれそうだ。
大怪我を負った上に威風の才を使った和暮家当主も、花緒に付き添われて運ばれて行く。壊れた祭壇も片付けられた。先ほどまでの争乱が嘘のように、あたりは夜の静けさに包まれた。
(お母様、蘇芳姫。お二人の無念を、少しは晴らせたでしょうか)
一葉は夜空を見上げ、首に下げた月影の石を手に握る。
宝物と言うにはあまりにも見栄えが悪く、ゴツゴツとしたただの石。だが、今の一葉にとっては、この石以外に縋れるものはない。
祖父は最後まで、一葉を十六夜家の駒としてしか見ていなかった。
父もそうだ。兄の匠人が一葉よりも年上であることを考えれば、父は一葉が生まれるよりも前から妾を作っていたはずだ。一葉よりも先に産まれた妾の子に、十六夜家を継がせたい――だから、香宵と一葉を軽んじた。
一葉は初めから、愛されてなどいなかったのだ。
「結局、またずぶ濡れになってしまったな」

