一葉が後ろを振り向こうとした、その瞬間――。
祖父が右手を挙げて火輪剣を天に向け、思い切り振り下ろして空を斬った。
剣から一筋の炎が放たれ、真っすぐに花緒に向かう。
(危ない!)
一葉が過去を思い出したのは、和暮の威風の才を使ったからだ――そう、祖父に伝えてしまった。だから祖父は怒りにまかせて、花緒に剣を向けたのだ。
「花緒様! 逃げて!」
叫ぶがもちろん間に合わない。
身重である上に、威風の才を使ったばかりで体力の落ちた花緒が、炎を上手く避けられるわけがない。
間に合わない。
剣から放たれた炎が、花緒を斬る――。
そう思ったが、地面に倒れたのは花緒ではなかった。
「……お父様!」
花緒の悲痛な声が響く。
寸でのところで花緒を突き飛ばして守り、代わりに傷を負ったのは――花緒の父、和暮家の当主だった。右腕に深い傷を負い、血を流してうずくまっている。
「お祖父様! もうこんなことはお止めください!」
一葉は祖父を振り向く。
「はははっ! どうだ。炎武の才がなくとも、火輪剣さえあれば炎を司ることができる。月影の石を渡せ。さもなくば、力ずくで奪うしかなくなるぞ」
「蘇芳姫を殺め、主家の当主を傷付けてまで、なぜ王位を……」
一葉が言い終わる前に、火輪剣がもう一度火を噴いた。
夜闇に覆われた空が炎に照らされ、まるで夕焼けに戻ったように赤く染まる。
一葉の視界が、炎で包まれた。
(お祖父様、今度は私の命を狙ったのね?)
降りしきる雪に、激しい炎。
一瞬見えたその光景は、十年前の惨禍の夜を思い出させる。
一葉は、目を閉じた。
祖父が右手を挙げて火輪剣を天に向け、思い切り振り下ろして空を斬った。
剣から一筋の炎が放たれ、真っすぐに花緒に向かう。
(危ない!)
一葉が過去を思い出したのは、和暮の威風の才を使ったからだ――そう、祖父に伝えてしまった。だから祖父は怒りにまかせて、花緒に剣を向けたのだ。
「花緒様! 逃げて!」
叫ぶがもちろん間に合わない。
身重である上に、威風の才を使ったばかりで体力の落ちた花緒が、炎を上手く避けられるわけがない。
間に合わない。
剣から放たれた炎が、花緒を斬る――。
そう思ったが、地面に倒れたのは花緒ではなかった。
「……お父様!」
花緒の悲痛な声が響く。
寸でのところで花緒を突き飛ばして守り、代わりに傷を負ったのは――花緒の父、和暮家の当主だった。右腕に深い傷を負い、血を流してうずくまっている。
「お祖父様! もうこんなことはお止めください!」
一葉は祖父を振り向く。
「はははっ! どうだ。炎武の才がなくとも、火輪剣さえあれば炎を司ることができる。月影の石を渡せ。さもなくば、力ずくで奪うしかなくなるぞ」
「蘇芳姫を殺め、主家の当主を傷付けてまで、なぜ王位を……」
一葉が言い終わる前に、火輪剣がもう一度火を噴いた。
夜闇に覆われた空が炎に照らされ、まるで夕焼けに戻ったように赤く染まる。
一葉の視界が、炎で包まれた。
(お祖父様、今度は私の命を狙ったのね?)
降りしきる雪に、激しい炎。
一瞬見えたその光景は、十年前の惨禍の夜を思い出させる。
一葉は、目を閉じた。

