火輪の花嫁 ~男装姫は孤高の王の夢をみる~

「香宵姫の霧中の才で記憶が消えているんだ。そしてその霧中の才の力を打ち消すことができるのは……和暮の威風の才」

 久遠と燦は顔を見合わせ、頷き合う。

 まだ諦めてはいけない。
 祖父は月主の宝物を取り返すために花緒を狙った。しかし、宝物を持っているのは花緒ではなく久遠。だから祖父は、もう花緒を狙うことはないだろう。

 祖父が次に考えることは何か。久遠は考えを巡らす。

 十六夜の願いは、主家の地位を取り戻すこと。
 それには月主の宝物と五主家の同意、そして天からの赦しが不可欠だ。
 天の怒りによって主家を追われた十六夜が、天からの赦しを得られるわけがない。

 綺羅ノ王に嫁ぐことのできる唯一の娘を失い、同時に月主の宝物を失い。
 その上、天からの赦しも得られないとなれば、祖父の考えの至るところは容易に想像がつく。

(もう一度、火輪剣(ひのわのつるぎ)を奪おうとするだろう――)