自分は、どうして医者になったんだっけ。
別に、親が医者だったわけじゃない。
高校一年まではピアニストになりたかった。
鍵盤を叩いている時以上に、幸せを感じる瞬間なんてなかった。
……母さんが、突然死んで。
その日を境に、人生のすべてが変わった。
音楽高校を辞めざるを得なくなって、
家のことをほとんど全部、自分でやらなきゃいけなくなって。
家に帰ったって、料理が用意されているわけでもない。
文字どおり、すべてを失ったと思った。
夢も、希望も。
……それでも、まだ一つだけ残っていた。
“救う側でいたい”という、分不相応な欲。
誰かの痛みに手を伸ばせる人間でありたかった。
たとえ、自分が救われないままであっても。

