音に溺れる





俺も多分、一年前はそうだったと思う。

医学部の同期たちと肩を並べて。学科の中で誰が可愛いだとか、誰が性格いいだとか。あるいは、
他大学の看護学科の子と合コンをやるだとか。

誰と誰が付き合った、あるいはすぐに別れた。 

そういう他愛のないことで笑い合って、年相応に、『恋愛そのもの』に憧れていた。

自分のキャパシティを超える重圧に怯えることもなく。

相手の人生に責任を負うことの恐ろしさや、一生消えない傷をつけてしまうかもしれないという恐怖を知ることもなく。

ただ純粋に、好きな女の子と手を繋ぐファンタジーを夢見ていられた、あの無責任で軽やかな時間。

今となっては、もう二度と戻れないであろうその『普通の男の子』の輪郭が、サトルの背中に重なって見えて。

俺は少しだけ眩しそうに目を細め、サトルたちには見えないように、自嘲気味な笑みを深く刻んだ。