@SoundJam_Official
[情報解禁] 本日のライブで発表しましたが、Sound Jam初の全国対バンツアーが決定しました!
半年間かけて以下の日程で全国を巡る予定です。
チケット詳細、ゲスト予定など続報を楽しみにお待ちください。
……
夏が、終わっていく。
合宿も終わり、夏の最後のライブを無事成功させた数日後。
少しだけ涼しさを孕むようになった夕暮れの街で、俺は水瀬と会う機会を得ていた。
夏休み中は何度かメッセージのやり取りはあったし、前半に一度だけ『過去問の礼』という極めて合理的な名目で食事に行ったけれど。あくまで俺も彼女も、ただの『同級生』という安全な距離感を崩すことはなかった。
「お待たせ。久しぶりだね」
待ち合わせ場所に現れた彼女は、ふわりと風に髪を揺らしながら、事もなげにそう微笑んだ。
……酷く曖昧な関係だ。そう思う。
少しだけ目を伏せ、俺は胸の奥で自嘲した。
今日だって、ここに誘ってくれたのは水瀬の方からだった。用件なんて特にない、ただの隙間時間を埋めるような誘い。
相手が、例えばあんなにも目を引く、圧倒的に綺麗な子じゃなければ。
俺はもう少し素直に、「俺に気があるんじゃないか」なんていう『勘違い』ができた気がする。
ーーこの美しく、どこまでも自由で誇り高い女性が、自分のような空洞だらけの人間に好意を持っているだなんて。
そんな都合のいい自惚れができるほど、俺は自分に自信がある人間じゃなかった。
彼女の隣を歩きながら、街頭のショーウィンドウに映る自分と彼女の姿を無意識に比較してしまう。
彼女の持つ、誰からも愛されてきた人間特有の余裕。それに対して、常に何かに怯え、理屈という鎧で全身を固めているひどく窮屈な俺。
釣り合っているとは、到底思えなかった。
「……なんか、疲れてる?」
不意に、水瀬が少しだけ歩調を緩め、俺の顔を下から覗き込んできた。
その屈託のない、けれどどこか核心を突くような瞳に見つめられると、俺の構築した防壁の足元がグラグラと揺らぐのを感じる。
(……そもそも。恋愛なんてしてる場合じゃないんだ)
彼女の視線から逃げるように前を向き直りながら、俺は冷めた頭で、理性が鳴らす警告音に耳を傾けた。
先日公式アカウントで発表したばかりの、半年間に及ぶ全国ツアー。
医学生としての膨大なタスク。シキたちを最高の舞台へ引き上げるための、1分1秒を争うスケジュール管理。
俺のキャパシティは、とっくに限界まで埋まっている。これ以上、水瀬瑞希という強烈な『変数』を盤面に持ち込めば、確実に破綻する。
「……いや。ツアーの段取りで、少し寝不足なだけだ」
自分の心を守るために、ひどく無愛想にそう返すのが、今の俺にできる精一杯の抵抗だった。

