音に溺れる




彼らの自然な空気感を前にすると。


……この空間において、何が一番の『ノイズ』になっているかといえば、他でもない俺自身であるような気がした。


高校の同期で、幼馴染同士。

先の将来や売れるための計算なんてろくに考えず、ただ純粋に音を鳴らすのが好きでやっていたサトルたちのバンドに、俺が突然、明らかな『異分子』として入り込んだのだ。

だからこそ、俺は面倒な裏方の事務作業や、ライブハウスとの交渉、バンドの活動方針の策定といった『機能的な役割』をすべて一手に引き受けてきた。

有能なパーツとして彼らの役に立つことでしか、この完成された輪の中に、自分の居場所を正当化できなかったからだ。

……けれど、正直なところ。

俺がエゴで作り上げたその無理なバランスがもたらす『歪み』が、最近になって無視できないほど大きくなってきている気がした。

(……サトルは、シキのこと……好きなんだろうな)

煙の向こうで笑うサトルの横顔を見つめながら、ひどく冷めた頭で結論を弾き出す。

シキが俺のことをどう思っているかは、今は計算に入れない。

ただ、サトルの立場からすれば……『ずっと一番近くにいたはずの自分』を差し置いて、ぽっと出の明らかな異分子である俺に、彼女が絶対的な信頼を寄せ、全力で頼り切っている現状が、面白いはずがないのだ。

それが、あくまで『バンドのリーダーに対する信頼』という建前であったとしても。

サトルの内側に燻る焦燥感や、彼が時折こちらに向ける牽制の視線を、俺は見逃すほど鈍感ではなかった。

俺というノイズが介入したことで、彼らの本来あったはずの穏やかな関係性まで歪ませてしまっているのではないか。

チリ、と弾ける線香花火を見つめながら、俺は胸の奥に芽生えた得体の知れない重苦しさを、また一つ、冷たい理屈の箱の中に無理やり押し込んだ。