音に溺れる




『覚えてたら』という言葉通り、俺の存在は、見知らぬ男たちがいる酒の席の賑やかな笑い声の中で、いとも簡単に忘れ去られてしまったのだろう。

彼女の意識の中核に、俺は居ない。

その事実が、暗闇の中でゆっくりと首を絞めるように俺の息を奪っていく。

惨めだった。

どうしようもなく惨めで、空っぽな自分がひどく滑稽に思えて、ふと、強烈な自己嫌悪が込み上げてきた。

……この間の打ち上げに、水瀬をメンバーとスタッフに見せつけるように紹介した記憶が蘇る。

あんな風に彼女をわざわざ人前に晒して、自分の所有物だとアピールしたのは。

俺は、そうやって満たされない自尊心を満たしたかったのか。

彼女の心の一番深いところには触れられない。

俺がいなくても一人で完璧に立っていられる彼女にとって、俺は決して『不可欠な存在』ではないと、本当はとっくに気づいていたから。

だからこそ。

上手くやっている、といった形を、せめて他人の前では取らなければ。

釣り合っているという虚像で外堀を埋めなければ。
不安でどうにかなりそうな自分自身が、完全に壊れてしまいそうだったのか。


俺は、暗い天井に向けてゆっくりと腕を伸ばし、決して掴めない虚空を握りしめて、誰に届くこともない乾いたため息を落とす。