もう四十分はここに立っている。
腕を組み、仁王立ち。
隣のおじさんはその前からいた。
深いシワの刻まれた渋い顔立ちだが、服装はラフなシャツにジーパン。
ただじっと前を見つめている。
左後方にも一人、女性がずっと立っている気配を感じる。
時折、鳴るスマホのシャッター音。
親子が新たにやってきた。
小学生くらいの娘が母親の袖を引くが、母親は首を左右に振る。
二人はきゃっきゃとはしゃいで十分ほどでいなくなった。

「あ、かわいー」

二人組の若い女性たちが僕の前に立つ。
髪の長い女性たちからは香水の香りがした。
さらに男女のカップルが加わった。制服は着ていないがおそらく学生だ。
僕はまだその場を離れるつもりはない。
おじさんも相変わらず黙々と見ている。


その時だった。
ガラス窓の向こうで子犬が尻尾をふったまま、ころんと転がった。
真っ白でふわふわな毛。つぶらな黒い瞳。
ピンク色の舌を出し、自分でも一瞬何が起きたかわからないという、きょとんとした顔。

あまりの愛らしさに思わず顔がほころぶ。

「あの子犬、可愛かったねー」

髪の長い女性たちが微笑みながら去っていく。
スマホ女性もスマホをバックにしまう。
横を向くとおじさんと目が合った。
頬を紅潮させ小さく頷く。

土曜の午後、ペットショップの前。