この場に来てから初めて感じる恐怖に、ぶるっと震えた体を擦りながら、「……怖っ。」と声を出す。
聞こえたその漏れた声に男は僅かに眉を寄せた。
「だから止めたんだ。」
「さ、先に言ってくださいよ……」
結は胸を押さえる。
まだ心臓がうるさい。目の前の人が止めてくれなかったらと考えて更にゾッとする。
「人を助けようとしただけなのに。」
「この世界で他者を救うと言う事は、自らの死を覚悟しなければならないんだ。」
男は先程よりもほんの少しだけ砕けた話し方になった。怖い人かと思ったけど、それよりも優しい人だと分かる。でも……
「嫌な世界ですね。」
「否定はしない。」
即答。結は思わず男を見る。優しいだけではないのは分かる。少しくらい冗談を言うかと思ったのに、本当に否定しなかった。
「……ところで。」
結は気を取り直し、佇まいを直し男と一歩距離を開け首を傾げた。
「あなた、誰ですか?」
今更である。男もそう思ったらしく、露骨に呆れた顔をした。こっちは男の名前を聞く余裕さえ無かったのだから仕方ないだろう。
「今聞くのか。」
「今聞きます。」
男は少し考える素振りを見せ、そして……
「天山神だ。」
「てんざん、しん?」
「ああ。」
「……名前ですか?」
「ああ。」
会話が終わった。終わってしまった。
ー……え、本当に終わり??
結は数秒待った。続きがあると思ったからだ。
でも、なかった。まじで??本気で言ってる?
「それだけですか?」
「それだけだ。」
「嘘でしょ。」
思わず本音が出てしまった。
「普通こういう時ってもう少しありません?」
「ない。」
そっぽを向かれてしまった。きっとこの人は不器用な人なのかもしれない。
「年齢とか。」
「知らん。」
だから、仕方ないから結の方から聞くことにした。
「住所とか。」
「ない。」
聞くことにしたのだが……
目を閉じて、そっぽを見ながら否定していく。
「家族とか。」
「いない。」
「趣味とか。」
そこで初めて、天山神が少し考えた。
ほんの少しの間。
「……ないな。」
「ないんかいっ!!!」
思わず友達とするようなツッコミをしてしまった。見ず知らずの人にしていいものではないね。ゴホンゴホン。
「えっと、人生楽しいですか?」
当たり障り無い返事をしようと思ったのにっっ!
「人生について考えたことは無い。」
結は思わず天を仰いで、「あぁあ」と野太い声を出す。
ー……駄目だこの人。
会話が続かない。
「じゃあ私も自己紹介しますね。」
気を取り直し、半ば意地になって言う。
すると天山神が僅かにこちらを見た。
「澄嶼結です。」
「そうか。」
「終わらせないでください。」
今度は結がため息を吐く番。ゴホン。
「澄嶼が名字で、結が名前です。十六歳になったばかりです。高校一年生です。」
「こう、こう?」
「……?……趣味はお散歩。後は空を見ること。好きな食べ物は甘いものです。」
無表情のまま見下ろされるだけと言うのは、とてもやりにくい。それに、なんだか一方通行だ。
「もう少し興味持ってください。」
「……?何故だ。」
「何故だ、じゃないです!」
結は思わず声を上げた。
天山神が僅かに眉を寄せるのを見る限り本当に理解できないらしい。
聞こえたその漏れた声に男は僅かに眉を寄せた。
「だから止めたんだ。」
「さ、先に言ってくださいよ……」
結は胸を押さえる。
まだ心臓がうるさい。目の前の人が止めてくれなかったらと考えて更にゾッとする。
「人を助けようとしただけなのに。」
「この世界で他者を救うと言う事は、自らの死を覚悟しなければならないんだ。」
男は先程よりもほんの少しだけ砕けた話し方になった。怖い人かと思ったけど、それよりも優しい人だと分かる。でも……
「嫌な世界ですね。」
「否定はしない。」
即答。結は思わず男を見る。優しいだけではないのは分かる。少しくらい冗談を言うかと思ったのに、本当に否定しなかった。
「……ところで。」
結は気を取り直し、佇まいを直し男と一歩距離を開け首を傾げた。
「あなた、誰ですか?」
今更である。男もそう思ったらしく、露骨に呆れた顔をした。こっちは男の名前を聞く余裕さえ無かったのだから仕方ないだろう。
「今聞くのか。」
「今聞きます。」
男は少し考える素振りを見せ、そして……
「天山神だ。」
「てんざん、しん?」
「ああ。」
「……名前ですか?」
「ああ。」
会話が終わった。終わってしまった。
ー……え、本当に終わり??
結は数秒待った。続きがあると思ったからだ。
でも、なかった。まじで??本気で言ってる?
「それだけですか?」
「それだけだ。」
「嘘でしょ。」
思わず本音が出てしまった。
「普通こういう時ってもう少しありません?」
「ない。」
そっぽを向かれてしまった。きっとこの人は不器用な人なのかもしれない。
「年齢とか。」
「知らん。」
だから、仕方ないから結の方から聞くことにした。
「住所とか。」
「ない。」
聞くことにしたのだが……
目を閉じて、そっぽを見ながら否定していく。
「家族とか。」
「いない。」
「趣味とか。」
そこで初めて、天山神が少し考えた。
ほんの少しの間。
「……ないな。」
「ないんかいっ!!!」
思わず友達とするようなツッコミをしてしまった。見ず知らずの人にしていいものではないね。ゴホンゴホン。
「えっと、人生楽しいですか?」
当たり障り無い返事をしようと思ったのにっっ!
「人生について考えたことは無い。」
結は思わず天を仰いで、「あぁあ」と野太い声を出す。
ー……駄目だこの人。
会話が続かない。
「じゃあ私も自己紹介しますね。」
気を取り直し、半ば意地になって言う。
すると天山神が僅かにこちらを見た。
「澄嶼結です。」
「そうか。」
「終わらせないでください。」
今度は結がため息を吐く番。ゴホン。
「澄嶼が名字で、結が名前です。十六歳になったばかりです。高校一年生です。」
「こう、こう?」
「……?……趣味はお散歩。後は空を見ること。好きな食べ物は甘いものです。」
無表情のまま見下ろされるだけと言うのは、とてもやりにくい。それに、なんだか一方通行だ。
「もう少し興味持ってください。」
「……?何故だ。」
「何故だ、じゃないです!」
結は思わず声を上げた。
天山神が僅かに眉を寄せるのを見る限り本当に理解できないらしい。

