千回目のあなたへ 〜十七の夏、迎えにきたのは神様でした〜


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 放課後。おばあちゃんと病室で少し話して、外に出るころには、空は夕暮れに染まりはじめていた。

 先生とも少し話をしたが、やはり手術にはまとまったお金が要るらしい。

 「お家の人に伝えておいてね」と言われたけれど、東京でひとり踏ん張っている母に、これ以上の無理をさせるわけにはいかない。
 先週、分家の叔母に頭を下げに行ったときは、ピシャリとドアを閉められた。

 これから、本当にどうしよう。
 考えても答えは出ないまま、夕暮れの石畳を歩く。

 その足元に、古ぼけた革の財布が落ちていた。

 金具のすみに、八雲神社の家紋。

 ……これ、京介のだ。

 お父さん譲りの大事なものだと、自慢げに見せてくれたことがある。

 スマホを見ると、十八時四十五分。

 京介は今夜七時、駅前で雛乃と待ち合わせだと言っていた。

 あたりに人通りはない。
 交番は駅の反対側にある。届けに行って戻るより、本人に渡したほうが早い。

 わたしは財布を握りしめ、自転車にまたがった。

 ***

 駅前広場に着いたのは、ちょうど七時だった。

 待ち合わせのロータリーを見渡しても、京介も雛乃もいない。

 ……もう、どこかへ向かったあとだろうか。

 LINEを送ろうとした、そのとき。
 ぽつり、と頬に冷たいものが落ちた。

 雨だ。

 桜の花びらが、強くなった風に舞い上がる。

 雛乃の言っていた「秘密の場所」が。もし本当に、あの橋のことなら――。

 わたしは自転車を漕ぐ足に力を込めた。