***
朱里にも京介にもバレないくらいの音で、小さく舌打ちをする。
——うっっっっっざ。
よりによって、ふたり乗り?
あの子と、京介が?
——朱里が来るまでは。
京介の隣も、女子たちの中心も、男子たちの視線も、ぜんぶあたしのものだった。
なのに、あの子が東京から越してきた途端、なに?
ちょっと顔がいいからって、男子たちもみんな鼻の下伸ばしちゃって。
家の周りの人たちまで、「千歳の本家のお嬢さんが、帰っていらしたのね」って、お祭りの巫女役の話まで蒸し返してきて。
でもお父さんは「もうすぐ、あの本家は終わる」って言っていた。
おばあちゃんが死ねば、うちが千歳家の権力を握る。だから、お父さんもお母さんも、おばあちゃんには手を貸さないらしい。
「雛乃ちゃん。千歳家を背負うのはあなたよ」
何度もそう言われて育ってきた。
あと、もう少し。
あの子はいずれ、東京に逃げ帰る。おばあちゃんの手術費だって、払えるはずがない。
そのとき、京介の隣には、ちゃんと、あたしだけがいる。
大丈夫。
あたしは、ずっと、この町の中心だから。
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朱里にも京介にもバレないくらいの音で、小さく舌打ちをする。
——うっっっっっざ。
よりによって、ふたり乗り?
あの子と、京介が?
——朱里が来るまでは。
京介の隣も、女子たちの中心も、男子たちの視線も、ぜんぶあたしのものだった。
なのに、あの子が東京から越してきた途端、なに?
ちょっと顔がいいからって、男子たちもみんな鼻の下伸ばしちゃって。
家の周りの人たちまで、「千歳の本家のお嬢さんが、帰っていらしたのね」って、お祭りの巫女役の話まで蒸し返してきて。
でもお父さんは「もうすぐ、あの本家は終わる」って言っていた。
おばあちゃんが死ねば、うちが千歳家の権力を握る。だから、お父さんもお母さんも、おばあちゃんには手を貸さないらしい。
「雛乃ちゃん。千歳家を背負うのはあなたよ」
何度もそう言われて育ってきた。
あと、もう少し。
あの子はいずれ、東京に逃げ帰る。おばあちゃんの手術費だって、払えるはずがない。
そのとき、京介の隣には、ちゃんと、あたしだけがいる。
大丈夫。
あたしは、ずっと、この町の中心だから。
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