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放課後。おばあちゃんと病室で少し話して、外に出るころには、空は夕暮れに染まりはじめていた。
先生とも少し話をしたが、やはり手術にはまとまったお金が要るらしい。
「お家の人に伝えておいてね」と言われたけれど、東京でひとり踏ん張っている母に、これ以上の無理をさせるわけにはいかない。
先週、分家の叔母に頭を下げに行ったときは、ピシャリとドアを閉められた。
これから、本当にどうしよう。
考えても答えは出ないまま、夕暮れの石畳を歩く。
その足元に、古ぼけた革の財布が落ちていた。
金具のすみに、八雲神社の家紋。
……これ、京介のだ。
お父さん譲りの大事なものだと、自慢げに見せてくれたことがある。
スマホを見ると、十八時四十五分。
京介は今夜七時、駅前で雛乃と待ち合わせだと言っていた。
あたりに人通りはない。
交番は駅の反対側にある。届けに行って戻るより、本人に渡したほうが早い。
わたしは財布を握りしめ、自転車にまたがった。
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駅前広場に着いたのは、ちょうど七時だった。
待ち合わせのロータリーを見渡しても、京介も雛乃もいない。
……もう、どこかへ向かったあとだろうか。
LINEを送ろうとした、そのとき。
ぽつり、と頬に冷たいものが落ちた。
雨だ。
桜の花びらが、強くなった風に舞い上がる。
雛乃の言っていた「秘密の場所」が。もし本当に、あの橋のことなら――。
わたしは自転車を漕ぐ足に力を込めた。


