意識が戻ったとき、最初に見えたのは緋桜さんの顔だった。
「朱里」
名前を呼ばれて、はっと息を吸う。
休憩所の畳。開け放たれた障子。外から聞こえる、祭りのざわめき。
倒れたのは、ほんの一瞬だったらしい。
「大丈夫?」
「……はい」
そう答えたものの、胸の奥にはまだ、刃が刺さった感覚が残っていた。
あれは、ただの夢じゃない。
「緋桜さん。私、見ました」
緋桜さんの表情が、わずかに変わる。
「未来の自分が。堕神に……刺されるところを」
休憩所の空気が、静かに張り詰めた。
「でも今の私でもなくて、たぶん、もう少し先の……」
うまく言葉にならない。
それでも、話さなければいけない気がした。
「左手の薬指に、指輪があって……久遠桜の下で、堕神に刺されていました」
緋桜さんは、しばらく何も言わなかった。
「……そうか」
返ってきたのは、それだけだった。
緋桜さんの手が、そっとわたしの手に重なる。
「話してくれてありがとう」
それ以上、緋桜さんは何も言わなかった。
重ねられた手の冷たさが、わたしを少しずつ休憩所へ引き戻してくれる。
「あの……」
何か言わなきゃと思うのに、うまく言葉が出てこない。
そのとき、入り口の方から七姫がそっと顔を覗かせた。
七姫も柏も、少しのあいだ席を外してくれていたらしい。
きっと、気を遣ってくれたのだろう。
「あかりん、大丈夫? 飲み物とか、甘いものとか。私、ほしいもの買ってくるよ」
「ほしいもの……」
そう聞かれて、少し考える。
怖いものを見たばかりなのに、このまま休憩所に閉じこもっていたら、余計にそのことばかり考えてしまいそうだった。
「……ひとつだけ、お願いしてもいいかな」
「朱里」
名前を呼ばれて、はっと息を吸う。
休憩所の畳。開け放たれた障子。外から聞こえる、祭りのざわめき。
倒れたのは、ほんの一瞬だったらしい。
「大丈夫?」
「……はい」
そう答えたものの、胸の奥にはまだ、刃が刺さった感覚が残っていた。
あれは、ただの夢じゃない。
「緋桜さん。私、見ました」
緋桜さんの表情が、わずかに変わる。
「未来の自分が。堕神に……刺されるところを」
休憩所の空気が、静かに張り詰めた。
「でも今の私でもなくて、たぶん、もう少し先の……」
うまく言葉にならない。
それでも、話さなければいけない気がした。
「左手の薬指に、指輪があって……久遠桜の下で、堕神に刺されていました」
緋桜さんは、しばらく何も言わなかった。
「……そうか」
返ってきたのは、それだけだった。
緋桜さんの手が、そっとわたしの手に重なる。
「話してくれてありがとう」
それ以上、緋桜さんは何も言わなかった。
重ねられた手の冷たさが、わたしを少しずつ休憩所へ引き戻してくれる。
「あの……」
何か言わなきゃと思うのに、うまく言葉が出てこない。
そのとき、入り口の方から七姫がそっと顔を覗かせた。
七姫も柏も、少しのあいだ席を外してくれていたらしい。
きっと、気を遣ってくれたのだろう。
「あかりん、大丈夫? 飲み物とか、甘いものとか。私、ほしいもの買ってくるよ」
「ほしいもの……」
そう聞かれて、少し考える。
怖いものを見たばかりなのに、このまま休憩所に閉じこもっていたら、余計にそのことばかり考えてしまいそうだった。
「……ひとつだけ、お願いしてもいいかな」


