千回目のあなたへ 〜十七の夏、迎えにきたのは神様でした〜



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 わたしたちは、月に一度、満月の夜に会った。

 里の人々の願いを伝え、神事のあとは桜の根元に並んで星を見上げたり、他愛もない話をしたり。

 ときには、緋桜さまがこっそり里の外へ連れ出してくれることもあった。

 山を越えた先の遠い町。夜店の灯り。はじめて見る大きな川。
 わたしが知らなかった景色を、緋桜さまは言葉通りひとつずつ見せてくれた。

 奥座敷に戻れば、わたしはまた人々の願いを預かるためだけの器に戻る。

 けれど満月の夜だけは、緋桜さまの隣で、ただの初音でいられた。

 幸せだった。

 ーーあの日が、来るまでは。

 初夏に近い夜。

 いつものように久遠桜の根元で待っていたわたしの背後に、頭巾を深く被った男が立っていた。

 声を上げる間もなく、冷たい刃がぶすりと胸を貫く。

 「ふははははっ、ついに、ついにやったぞ——!」

 哄笑が夜にこだまする。男が走っていくのと入れ替わるように、おおきな白豹と緋桜さまがかけてくる。

 「ひおう、さま……」
 「待ってろ、すぐに俺があいつを——」

 犯人を追って立ち上がろうとした緋桜さまの袖を、震える指で掴む。

 いかないで。

 ひとりで死ぬのは、嫌だ。

 「初音! しっかりするんだ、初音——!」

 最期は、大好きな貴方の側にいたい。

 緋桜さまの叫びを最後に、わたしの世界は真っ暗になった。

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