千回目のあなたへ 〜十七の夏、迎えにきたのは神様でした〜


 ***

 「朱里!」

 ばん、と障子が開いた。
 月明かりを背に、緋桜さんが立っている。いつもの穏やかな表情ではなく、ひどく切羽詰まった顔だった。

 「大丈夫?」
 「……少し、立ちくらんだだけです」

 そう答えても、緋桜さんは安心した様子を見せなかった。

 部屋に入り、わたしのそばに膝をつく。
 冷たい手が、そっと頬に添えられた。

 その指先に触れられた瞬間、夢の中で見た血の色が、またまぶたの裏にちらつく。

 初音さん。

 夢の中で、緋桜さんが何度も呼んでいた名前。

 「緋桜さん。ひとつだけ、聞いてもいいですか」

 聞いてはいけないことのような気がした。
 それでも、もう止められなかった。

 「……初音、という人を知っていますか」