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「朱里!」
ばん、と障子が開いた。
月明かりを背に、緋桜さんが立っている。いつもの穏やかな表情ではなく、ひどく切羽詰まった顔だった。
「大丈夫?」
「……少し、立ちくらんだだけです」
そう答えても、緋桜さんは安心した様子を見せなかった。
部屋に入り、わたしのそばに膝をつく。
冷たい手が、そっと頬に添えられた。
その指先に触れられた瞬間、夢の中で見た血の色が、またまぶたの裏にちらつく。
初音さん。
夢の中で、緋桜さんが何度も呼んでいた名前。
「緋桜さん。ひとつだけ、聞いてもいいですか」
聞いてはいけないことのような気がした。
それでも、もう止められなかった。
「……初音、という人を知っていますか」


