その夜の月は、特に明るかった。
「また、会えますか?」
白い巫女装束をまとった少女が、桜の下でそっと顔を上げる。
腰まで届く黒髪が夜風に揺れ、伏せがちな瞳には月明かりが滲んでいた。
儚げで、今にも桜の影に溶けてしまいそうなのに、その声だけはまっすぐだった。
少女の声に応えるように、頭上の桜がざあっと揺れる。
枝の上では、紅い瞳の男がこちらを見下ろしていた。
白に近い銀の髪は肩に届くほどの長さで、風を含んでふわりと揺れている。
毛先だけが、桜の花びらを溶かしたような淡い桃色に染まっていた。
「ああ。必ず」
ーーこの世界には、本物の神様がいる。


