あこがれあこがれあこがれ

 あれから、四ヶ月が経った。
 二歳の誕生日。だけど、あの子は、あの歳のまま。
 よく晴れた日だったので、公園に行く。
 他人を極端にまぶしがったり、目の動きがおかしいのではないかと気になる。
 走り回る子ども達。
 お母さんが名前を呼ぶと、振り返る。
 四ヶ月。
 あの子の顔がだんだんと、思い出せなくなっていた。



 三歳の誕生日。



 四歳の誕生日。



 五歳の誕生日は、忘れてしまった。



 ランドセルを背負う子どもを見て、そういえば、もう、それくらいなのかもと思った。



 何年が経ったのだろうか。
 私は、三十歳を超えた。
 あっという間であった。
 働いている時間など、生活に必要な時間以外は、ずっと眠っていた。
 成長なんて、しないのに。
 どれだけ、眠っても、寝足りなかった。

 仕事で、タクシー移動をしている時。
 こんなコマーシャルを見た。
 四十歳までの乾眠手術。



 手術当日。
 再度医師からの説明を聞く。
 子どもの乾眠手術と違い、かなり高額な手術になるため、私は一つの契約を結んだ。
 灌漑脳法。
 乾眠時に、脳の中に、人工的な神経回路。知的回路を増設すること。
 そこで得た知識を用いて、乾眠から覚めた後、乾眠手術の技術開発の仕事に就くこと。
 私は、サインをした。
 別に、この数年間、ずっと働いてきたのだから。
 私は、三十年眠った。



 目が覚めると、とても、すっきりしていた。
 なにか、悩んでいた気がするけれど、思い出せない。
 思い出そうとしたけれど、仕事が忙しかった。
 多くの人が眠っていたからだ。
 乾眠手術の技術開発の仕事に就くはずだったが、乾眠施設の維持、保守点検業務に就いた。
 単調な仕事。
 なのに忙しい。
 くるくると、来る日来る日。
 糸車を回し続ける。
 そして、夜は、ただぐっすりと眠る。

 仕事に慣れてきた、他の人たちと違って、灌漑脳法を受けたからかもしれない。
 余裕が出てくると、辺りを見回すことができた。
 私以外にも、人がいるんだ。と気がついた。 そして、恋を、してしまった。
 私より、二つ年上の。
 久しぶりの恋愛であった。
 けれど、緊張しなかった。
 二人。とても気が合って。
 この人と、ずっと一緒にいたい。
 そう思った。
 結婚が決まり。
 両親へ挨拶をしたいと、そういう話になった。
 私の両親は、三十年眠っている間に、死んでいた。
 なので、彼の両親の方だけ、ご挨拶をすればいい。
 彼は、自分の家族の事を、とても、誇りに思っていて、大切に思っていた。
 そんな話を、よく聞かされて、私は思い出してしまった。
 私には、子どもがいるということに。



 仕事を休み。彼には秘密で。
 私の子どもが眠っている場所に行った。
 全部。ないことにしようとしていた。
 けれど。行くと。もう、ないことになっていた。
 取り違え。
 両親がどちらも死んでしまった、乾眠児童は、里子に出される。
 私の子どもは、別の誰かの子どもになっていた。
 私が行って、初めて発覚したことに、施設長まで出てきて、平謝り。
 けれど、私は、どうでも良かった。
 解放された。
 そう思った。
 私なんかより、きっと、幸せになっている。
 だから、私も幸せになろうと思った。
 里親の情報は分かっている。と施設長は私に、里親のプロフィールを呈示した。



 彼の両親だった。