七月。
期末試験の喧騒が過ぎ去ると、学校全体がどこかそわそわとした空気包まれ始めた。
窓の外からは、気が急いた蝉の声が途切れ途切れに聞こえてくる。
本格的な夏の足音が、すぐそこまで迫っていた。
僕の進路希望調査票は、相変わらず白紙のままだったけれど、担任の教師はもう何も言わなくなっていた。
呆れられたのかもしれないし、僕の目が以前より死んでいないことに気づいたからかもしれない。
「蓮くん、終業式が終わったら、ちょっと付き合ってほしいところがあるの!」
前日の放課後、葵からそう書かれた小さなメモを渡されていた。
そして当日。
うだるような暑さの中、僕たちは制服の第一ボタンを外した姿で、学校から少し離れた小高い丘の上にある、古い見晴らし台にいた。
眼下には、僕たちが暮らす小さな街並みと、その向こうに広がる真っ青な海が見える。
「冷たいの、はいどうぞ」
葵が僕の頬に、自販機で買ったばかりの冷たい炭酸飲料の缶を押し当ててきた。
「冷たっ……! ありがとう、葵」
「へへ、生き返るね」
葵はフェンスに両手をかけ、気持ちよさそうに目を細めて潮風を浴びている。
