自分の暗い過去を吐露してしまった後悔で、僕は俯いた。せっかくの静かな放課後を、重苦しい空気にしてしまった。
「……蓮くん」
椅子が床を擦る音がして、葵が僕の目の前まで歩いてきた。
彼女の指先には、青や紫の絵の具が小さく染みついている。葵は僕の前にしゃがみ込むと、下から覗き込むようにして僕の目をまっすぐに見つめた。
「蓮くんのカメラは、ちゃんとお父さんの言葉を覚えてるよ。だって、蓮くんが私を撮ってくれた写真……私、宝物だもん」
葵の瞳が、雨の日の薄暗い光の中で、潤んだようにきらめいた。
「私ね、中学の頃、美術の先生に『君の絵は色が悪目立ちして、品がない』って言われたことがあるの」
「え……?」
いつも明るい葵の口から出た意外な言葉に、僕は息を呑んだ。
「すごくショックで、一時期、絵が描けなくなっちゃって。私の色って、間違ってるのかなって、ずっと怖かった。でもね、蓮くんが
私の絵を見て『生きてるみたいだ』って言ってくれた時、胸の奥のモヤモヤが全部消えたの。蓮くんの言葉が、私の絵に、もう一度光をくれたんだよ」
葵は少し照れくさそうに笑って、自分の胸に手を当てた。
「だからね、お互い様。蓮くんがカメラを辞めてたのも、私が自分の色を怖がってたのも、全部今日までのプロローグ。私たちは、お互いの光を見つけるために出会ったんだよ、きっと」
お互いの光。
