さよなら、僕のひまわり



 ファインダーの隅、茶色い枯れ草の隙間に、ほんの小さな『色彩』が映り込んだ。

 僕は思わず地面に膝をつき、カメラのレンズをその場所に向けた。

 ピントリングを慎重に回す。
 
 マクロレンズの向こうで鮮明に結像したのは、冷たい風に耐えるように、地を這うようにして健気に咲いている、一輪の野生の野菊だった。

 それはひまわりのように大きくもなければ、眩しくもない。
 
 だけど、凍てつくような冬の寒さの中で、誰に見せるためでもなく、ただ純粋な黄色い花弁を精一杯に広げていた。

 『どんなに暗い場所でも、そこにあるわずかな光を探すための道具なんだ』

 頭の中で、いつか葵に語った父親の言葉が蘇る。
 
 そして、その言葉を受けて、美術室で僕の目をじっと見つめてくれた葵の表情が、鮮明に脳裏にフラッシュバックした。

 (そうか。僕は、こういう光を写したくて、カメラを始めたんだ)

 世界がどれだけ寒く、寂しく見えても、そこには必ず、明日へ繋がる小さな光が灯っている。

 葵が東京で、孤独やプレッシャーと戦いながらキャンバスに向かっているように、僕もこの街で、僕にしか撮れない光を見つけ続けなければならない。

 僕は夢中でシャッターを切った。

 ——カシャ。

 乾いた冬の空気に、力強い駆動音が響く。