さよなら、僕のひまわり



 
 「僕、決めたよ」

 僕はカメラをぎゅっと握りしめた。

 「葵が東京に行っても、寂しくならないように。このひまわり畑みたいに、葵の心をいつでも明るくできるような写真を、僕、たくさ
 ん撮る。
 
 葵が絵を描き続けられるように、僕が葵の『光』を記録し続けるよ」

 進路希望調査票が白紙だった僕が、初めて口にした、未来への言葉。

 それは、彼女のプロポーツ(夢)を応援するという誓いであり、僕の、生涯で最初で最後の恋の告白でもあった。
 
 言葉にはしない、届かない告白。

 葵は目を見開いたまま、じっと僕を見つめていた。

 やがて、彼女の大きな瞳に、じわりと涙が溜まっていくのが見えた。


「……うん」


 葵は泣きそうな顔のまま、だけど世界で一番美しい笑顔を作った。

 「ありがとう、蓮くん。私、最高の絵を描くね。蓮くんがくれた光で、絶対に夢を叶えてみせるから」

 風が吹き抜け、何万本ものひまわりがザワザワと音を立てて揺れた。

 あまりにも眩しくて、切ない八月の太陽の下。

 僕は、彼女への溢れそうな想いを胸の奥に深く、深く閉じ込めた。
 この恋が実らなくてもいい。
 彼女の未来が輝くなら、僕は喜んで、彼女を送り出す影になろう。

 ひまわりの海の中で、僕たちはいつまでも、お互いを見つめ合っていた。