さよなら、僕のひまわり


 
 白い夏服のブラウスが風に揺れ、彼女の細い肩のラインを浮き上がらせていた。

 「ねえ、蓮くん。夏休み、何する?」

 葵が海を見つめたまま、不意に問いかけてきた。

 「何って……いつも通り、葵の絵のモデルをしたり、カメラを持ってそこら辺をぶらぶらしたり、かな。葵は?」

 「私ね、この夏、人生で一番大きな挑戦をするんだ」

 葵の声のトーンが、いつもより少しだけ低くなった。
 
 彼女はゆっくりと振り返り、僕の目をまっすぐに見つめた。

 その瞳の奥には、強い覚悟のような光が宿っている。

 「東京の、有名な美術大学の特待生試験を受けるの。現役からは一人か二人しか受からない、すごく厳しい試験なんだけど……。私、どうしてもそこに行きたい」

心臓が、ドクンと嫌な音を立てた。

 頭のどこかで、いつかはそんな日が来るのかもしれないと分かっていた。
 
 これだけの才能を持った彼女が、この小さな街に収まりきるはずがないのだと。

 「……そっか。すごいじゃん。葵なら絶対受かるよ」

 僕は精一杯の笑顔を作って、声を絞り出した。

 だけど、喉の奥がカラカラに乾いて、言葉がうまく出てこない。