刻の輪廻で君を守る

***

 な、なんでこんな状況になってるんだ??
 もう一度、辺りをよく見てみる。


 
 あ、ありのまま、今、起こったことを話すぜ。

 な…何を言っているのかわからねーと思うが俺も何をされたのかわからなかった……頭がどうにかなりそうだった……



「…………いい加減にしないとミリーも怒るよ、アシュレイお兄ちゃん……」
「あ、ああ。すまん……」

 はい、ごめんなさい。



「あのー、ミリー。私も、これはちょっと……どういうことなのか……」
「レイチェルお姉ちゃんもお姉ちゃんなのです」

 あの優しいミリーがピシャリと言って、流石のレイチェルも正座したまま言葉を呑みこむ。



 可愛らしい桃色で統一されたベッドと机。本棚にはクマのぬいぐるみ、そして窓際には例のフィッチさんが居られる鳥篭が吊るされている。

 久しぶりに入るミリーのお部屋。




 折角の日曜日、突然、ミリーが朝から俺の家に訪れ『アシュレイお兄ちゃんに話があるの』と、自分の家に来るように告げたのだった。

 そして、何故かミリーの部屋のカーペットの上で正座させられる俺と、同じく呼ばれたレイチェル。

 いつもは天真爛漫かつ明るさ満点の筈の我らが妹分はかつてない怒りのオーラで俺たちを見ていた。

「ミリーは、ほんっっとーに悲しいのです。アシュレイお兄ちゃんも、レイチェルお姉ちゃんにも」

 いきなりな話でついて行けない。一体、何の話なのだ、ミリーよ。

「まだ分かんないのかなぁ……最近のアシュレイお兄ちゃんとレイチェルお姉ちゃんの仲のことだよー!」
「!?」
「そ、それは……ね……」
「もう、ミリーも見てて限界なのです」

 動揺する俺たちにミリーは最後通告をする。

「祭りが終わってから変だよ、二人とも。妙に壁があるし、ヨソヨソしいし。……そんな、アシュレイお兄ちゃんとレイチェルお姉ちゃん、見ていたくない……ミリーは見たくないよー!!」

 そう。

 ミリーにもわかられていたのだ。俺とレイチェルの間のこの微妙な齟齬を。

「イヤだよ……ミリーの、二人はミリーの本当のお兄ちゃんとお姉ちゃんみたいに思ってるのに、そんな二人がバラバラになってしまうのは……」

 そして、シクシクと泣き出してしまう。

 こ、これはマズい!!

「い、嫌だなぁ、ミリー。俺とレイチェルはいつも仲良しだぞ? なんたって幼馴染みだからな。な?」
「え? ええ、そうよ、ミリー。私とアッシュはこう見えても本当はとても仲が良いんだから、ね、アッシュ?」
「「なー?」」

 二人して顔を引き攣らせながらも、俺たちの大事なミリーが泣き止むように何とか声を掛ける。

「……ホントに?」
「あ、ああ! 本当に決まってるじゃないか!」
「そうよ、ミリー。本当よ」
「じゃあ……」

 ……ようやく、泣き止んでくれたか。

 と、ホッと安堵していた俺とレイチェルに、ミリーは告げる。

「来週の日曜、2人ともお出掛けしてね! エルム草原にピクニックとか。ちゃーんと仲良くしてるか、ミリーとリアンちゃんで見てるんだからね」

 なぬ!? 何故に、そんな話に……

「えーと、ミリー。そんないきなりピクニックとか……」
「あれ? レイチェルお姉ちゃん、一緒にピクニック出来ないほど、アシュレイお兄ちゃんと仲悪くなったの!?」
「いやいや、そういう訳じゃなくって……」
「もう!! つべこべ言わないのー! レイチェルお姉ちゃんもアシュレイお兄ちゃんも! 仲良くピクニックするの! これはもうミリーが決めたんだから。ねー?」

 と、押し切られてしまうのだった。










 うーん、妙なことになった……。

 翌日、朝から司書室のいつもの机につきながら、ボーっと考える。

 そりゃ、昔は良くエルム草原にピクニックもだし、遊びにも行ったもんだが。何せ、郊外にある俺らの家からしたら、ここ中心街よりも直線距離は近いのだ。

 だとしても、だ。

 レイチェルとピクニック、なぁ。

 最近、やたらとトガッてるし、話が続くのだろうか? でも、ミリーとリアンが見張ってると言うし。

「何、悩んでるん? アシュ氏」

 俺がさっきから、うんうん唸ってるのを見かねたのだろう。バルが聞いてきた。

 そういや、リアンも来ると言ってたが?

「いや、今度の日曜にエルム草原にピクニックすることになるらしーんだが……リアンちゃんも来るらしいのだが、バルは聞いてるのか?」
「え? そーなん? 僕は聞いて無いけどなー」

 あれ? バルは聞いてないのか? だが、リアンが来るならバルも誘っておいた方が良いんではないのかな。……リアンの安全の為にも。

「ミリーがそう計画してるみたいだったぞ。リアンちゃんも、と。なのでてっきり知ってるものかと。でもそれならバルもどうだ? 今週の日曜なんだが」
「別に僕は用事が無いから良いのだけどもー。それ、本当に僕も行って良いんー?」

 とは言え、リアンも来るのだろ?

「リアンちゃんが来るなら逆にバルがいた方が良いのではないのか?」
「それも、そーなのだなー」

 と言いつつ、隣で今度はバルの方がうんうん唸っていると、豊満な胸を揺らしつつ彼女がやってきた。

「あら、何の話かしら。二人とも」

 セレスさんだ。

 相変わらず胸の割には腰の細さたるや……美人オーラが半端ない。

 今日は珍しく午前からこの図書館に来たらしい。

「ちょっと今日は午後に予定があってね。それより男性2人で何の話かしら? 私には言えない話?」

 そう、蠱惑的な流し目で問われると、どう答えるべきか戸惑ってしまうのだが……

「……今度の日曜に、近くのエルム草原という所でピクニックに行こうか、という話があってその話をバルにしていたんです」
「へぇ、ピクニック。秋だし、とても気持ち良さそうね」

 セレスさんは鈴を転がすような声で微笑んだ。

「良ければ、セレスさんもどうです? ワルターさんもご一緒に」

 まぁ、まさかこの美人がピクニックなどという野原の行事に赴きはしまい、と半分、社交辞令で誘っただけだった。

「あら、私達も参加させてもらって良いのかしら? それはとても嬉しいわ。他の人達との交流を通じてもっとこのクロノクル市のことを良く知ることが出来るし」

 あれ? 意外に乗り気だ、この人。

「ありがとう! またワルターにも確認しておくわ。大丈夫と思うのだけれど」

 そう言って、いつもの本探しを始めるセレスさん。思ったよりアウトドア派だったのかな? 図書館通いをずっとしてるからてっきり逆だと思ってたんだが。 

「……アシュ氏、これ、良かったんかなァ……僕は知らんのだけども……」

 バルが隣でボソッと文句を言ってくるが、何がいけなかったというのだ? ピクニックは大勢で楽しむものでは無いのか?

「僕は知らないよー」

 再度、念を押されるのだった。

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