拗らせスターと嘘な恋

 週末、日曜日。晴れて付き合うことになった僕たちは、二人で映画を観に来ていた。

「主人公、すごかったですね」
「そうそう。ストーリーも良かったけど、二重人格の演技すげーってなった」

 僕は正直、琉偉先輩と手を繋ぐのにドキドキして映画に集中できなかったけど、先輩はたぶん、僕と手を繋いでることを忘れるくらいスクリーンに釘付けだった。

 ――先輩は、本当に演じることが好きなんだな。

 映画終わりに立ち寄ったカフェで、夢中になって語る先輩を見て、そう思う。

 それなのに、どうして芸能界を引退してしまったのだろう。不思議に思っていると、先輩は僕の心を読んだかのようなタイミングで身の上話を始めた。

「うちは親父が芸能事務所をやってたんだけど、離婚してから母親の方針で芸能界を引退したんだ。でも俺は、ずっと演技を続けたかった」

 空になったグラスの氷が、カランと音を立てる。

「高校を卒業したら、俳優の道に進みたいと思う。簡単じゃないことは分かってるけど、自分がどこまでやれるか挑戦してみたいんだ」

 先輩の真摯な眼差し――力強いのに澄んだ目に、吸い込まれそうになる。

「琉偉先輩なら絶対すごい俳優になれます!」
「変わらないね」

 先輩は目を細めて笑う。

 何のことかよく分からなかったけど、先輩が鞄から取り出した、古くて拙い手紙を見て、僕はファンレターを出した時のことを思い出す。

 確か当時の僕は、ドラマや演じる役の感想とともに、ケントくんは絶対すごい役者になるから、自分も有名になって会いに行くと書いたのだ。

「いつか理人が描いた漫画の実写版に出れると良いな」
「僕も頑張らないとですね」

 もうめそめそ泣かない。今度こそ、夢に向かって頑張る先輩の横に、胸を張って立てる人間になりたい。

 夕日が差し込む窓際の席で、僕は決意を新たにした。