僕の密かな目標。それは高校一年のうちに、一度は漫画を公募に出すことだ。
――うーん。なんかこのキャラも琉偉先輩っぽい……。
今は秋のコンテストに向けてキャラクターを練っているところだが、最近、描くヒーローが全て琉偉先輩みたいになってしまう。
それもこれも、先輩が沼なのが悪い。なんて責任転嫁をしながら、楽しかった思い出を反芻する。
「この前のデートも楽しかったなぁ」
先輩と恋人ごっこを始めてから早三週間。
学校帰りにショッピングモールに寄ったのも楽しかったけど、一昨日のスポーツレジャー施設もすごく良かった。
――先輩、スポーツもできるとかズルすぎる!!
運動の苦手な自分が行って楽しめるのか不安だったが、先輩のかっこいい姿をたくさん見れるだけで楽しかった。
帰り際、「先輩かっこよかったです」と伝えたら、「いいとこ見せれた?」と悪戯っぽく笑っていたのを含めて、最高の思い出だ。
今度描く漫画のデートシーンにも織り込みたい。
『今日の反省会終了〜』
スマホに表示された通知を見て、僕は慌ててアプリを開く。
琉偉先輩だ。先輩は本当に研究熱心で、部活が終わって家に帰った後も、その日の演技について一人反省ノートをつけるのが日課らしい。
才能に驕らず、努力を続けているすごい人だ。
先輩のことをろくに知らないのに、『ちょっと苦手かも』と思っていた自分が恥ずかしい。
『お疲れ様です』
『ご飯食べた?』
『これからです。先輩は?』
『お腹空いてラーメン食べちゃった笑』
何気ないやりとりですら楽しくて、無意識のうちに顔が緩んでいたらしい。
母親が夕食時に、突然「恋人でもできたの?」と訊いてきた。
「へ!?」
「そんなに動揺しなくても。彼氏? 彼女?」
自分の恋愛対象について話したことがなかったのに、当たり前のように彼氏という選択肢が与えられてびっくりする。
今晩、父親は出張でいない。
少し迷ってから、僕は恐る恐る答える。
「……彼氏」
母親が心配するといけないので「仮だけど」とは言わなかった。
「そう。よかったわね」
緊張で一瞬強張った体から力が抜ける。
母親はあっさり認めるだけでなく、「来月からお小遣い増やそうか」とデート代の支援まで約束してくれた。
「僕が男と付き合ってるの、嫌じゃないの?」
呆気に取られて尋ねると、母親はこれまたあっさり言う。
「小さい頃、ドラマに出てた子役の男の子にファンレター出すくらい好きだったじゃない。それでなんとなく分かってたから何も驚かないわよ」
「ありがとう」
趣味も恋愛対象も、これまで人に言えず隠してきたけれど、先輩と出会ってから不思議と『これでいいんだ』という自信が湧いて、良い方向に進んでいる気がする。
――そういえば、あの時の子、どうなったのかな。
自室に戻った僕はふと気になった。
大好きだった男の子。朝ドラの名前で検索し、キャスト欄から子役の名前を探す。
――新谷ケント。そうそう、この子だ!
調べてみると、朝ドラに出て以来、目立った活動はないらしい。芸能界を引退した可能性が高いようだ。
「やめちゃったんだ」
今も活動を続けていたら高校生か、大学生くらいの歳だろう。
顔も整っているけど、とにかく演技が上手くて、将来はスーパースターになると思っていたから残念だ。
――きっと、めちゃくちゃかっこよくなってるんだろうな。
それこそ、琉偉先輩みたいに。
◇
――うーん。なんかこのキャラも琉偉先輩っぽい……。
今は秋のコンテストに向けてキャラクターを練っているところだが、最近、描くヒーローが全て琉偉先輩みたいになってしまう。
それもこれも、先輩が沼なのが悪い。なんて責任転嫁をしながら、楽しかった思い出を反芻する。
「この前のデートも楽しかったなぁ」
先輩と恋人ごっこを始めてから早三週間。
学校帰りにショッピングモールに寄ったのも楽しかったけど、一昨日のスポーツレジャー施設もすごく良かった。
――先輩、スポーツもできるとかズルすぎる!!
運動の苦手な自分が行って楽しめるのか不安だったが、先輩のかっこいい姿をたくさん見れるだけで楽しかった。
帰り際、「先輩かっこよかったです」と伝えたら、「いいとこ見せれた?」と悪戯っぽく笑っていたのを含めて、最高の思い出だ。
今度描く漫画のデートシーンにも織り込みたい。
『今日の反省会終了〜』
スマホに表示された通知を見て、僕は慌ててアプリを開く。
琉偉先輩だ。先輩は本当に研究熱心で、部活が終わって家に帰った後も、その日の演技について一人反省ノートをつけるのが日課らしい。
才能に驕らず、努力を続けているすごい人だ。
先輩のことをろくに知らないのに、『ちょっと苦手かも』と思っていた自分が恥ずかしい。
『お疲れ様です』
『ご飯食べた?』
『これからです。先輩は?』
『お腹空いてラーメン食べちゃった笑』
何気ないやりとりですら楽しくて、無意識のうちに顔が緩んでいたらしい。
母親が夕食時に、突然「恋人でもできたの?」と訊いてきた。
「へ!?」
「そんなに動揺しなくても。彼氏? 彼女?」
自分の恋愛対象について話したことがなかったのに、当たり前のように彼氏という選択肢が与えられてびっくりする。
今晩、父親は出張でいない。
少し迷ってから、僕は恐る恐る答える。
「……彼氏」
母親が心配するといけないので「仮だけど」とは言わなかった。
「そう。よかったわね」
緊張で一瞬強張った体から力が抜ける。
母親はあっさり認めるだけでなく、「来月からお小遣い増やそうか」とデート代の支援まで約束してくれた。
「僕が男と付き合ってるの、嫌じゃないの?」
呆気に取られて尋ねると、母親はこれまたあっさり言う。
「小さい頃、ドラマに出てた子役の男の子にファンレター出すくらい好きだったじゃない。それでなんとなく分かってたから何も驚かないわよ」
「ありがとう」
趣味も恋愛対象も、これまで人に言えず隠してきたけれど、先輩と出会ってから不思議と『これでいいんだ』という自信が湧いて、良い方向に進んでいる気がする。
――そういえば、あの時の子、どうなったのかな。
自室に戻った僕はふと気になった。
大好きだった男の子。朝ドラの名前で検索し、キャスト欄から子役の名前を探す。
――新谷ケント。そうそう、この子だ!
調べてみると、朝ドラに出て以来、目立った活動はないらしい。芸能界を引退した可能性が高いようだ。
「やめちゃったんだ」
今も活動を続けていたら高校生か、大学生くらいの歳だろう。
顔も整っているけど、とにかく演技が上手くて、将来はスーパースターになると思っていたから残念だ。
――きっと、めちゃくちゃかっこよくなってるんだろうな。
それこそ、琉偉先輩みたいに。
◇


