「どうしよう……琉偉先輩と付き合うことになっちゃった……」
先輩の告白(?)から土日を挟んで月曜日、僕は漫研の部室で頭を抱えていた。
月、木が漫研の活動日で、僕はそれ以外の日も部室に入り浸っているけれど、今日は活動メンバーが集まる日だ。
といっても、幽霊部員が多く、部室に来るのは多くて五人。今日はまだ、隣のクラスの派手なギャル――浅井メロしか来ていない。
僕の話を聞いたメロちゃんは目を見開き、ひとこと「マ?」と言った。
「先週の金曜日、先輩が急に部室に来て。今度男同士の恋愛要素のある劇をやるから、役作りのために付き合ってほしいって」
「えーー! なんそれ、激アツじゃん。イッチー、マルロー様にガチ惚れしてたし、悩む理由なんてなくね?」
「だって急だし、マルロー様なら絶対こんなことしないし、役作りのためとはいえ、どう接していいか分からないよ」
物心ついた時から、僕は男の人が好きだった。初恋は朝ドラに出てた子役の男の子。
女の子になりたいわけじゃないけど、少女漫画はヒロイン目線でときめいているし、正直マルロー様にも淡い恋愛感情を抱いていたと思う。
男の人と付き合うこと自体に嫌悪感があるわけではない。
――そもそも、ふりでも誰かと付き合うなんて初めてだし、先輩は根暗の僕とは違う光の住人でイケメンだし、思ってたより強引でちょっと苦手なタイプかも……。
そう。僕は突然の出来事に混乱していた。
未だにあれは夢かもしれないと思うけど、連絡先を交換したスマホには、今朝も先輩から『おはよう』のスタンプが送られてきている。
「イッチー、少女漫画家になりたいんっしょ?」
「う、うん」
「だったら取材チャンスじゃん。琉偉先輩は役作りのため。イッチーは漫画のネタ探しのため。Win-Winだと思うけど」
「それは……確かにそうかも……。でも僕なんかが先輩といたら、浮くんじゃないかな」
「イッチーは可愛いって! 自信持ちな!」
メロちゃんは明るく力強く、僕を励ました。
彼女と話すたび、オタクに優しいギャルって実在するんだぁ、と感動してしまう。
「自分が可愛いとは思わないけど、取材と割り切って頑張ってみようかな。何事も挑戦だよね」
「その意気だ! で、実際琉偉先輩ってどんな感じ? 噂じゃ、演じる役によって別人になるから、本性はミステリアスって話」
「そうなんだ。この前初めて話したから、まだ全然分からないや。自信があって、ザ陽な人って感じがしたけど……」
背後でガラッと扉の開く音がした。
「りーひとっ」
「わっ!!」
てっきり、部員の誰かが顔を出したのかと思いきや、後ろからどんっと衝撃を受け、僕は肩を跳ね上げる。
顔を上に向けると、相変わらずキラキラと眩しい琉偉先輩が、僕を覗き込んでいた。
「先輩、今日は部活じゃ?」
「今日は体育館の点検があって、部活は基礎練だけで解散」
「そうだったんですね」
「驚かせようと思って黙ってた」
先輩は目を細めて笑う。
――って、何この会話!! 本当に付き合ってるみたいだ!?
急に恥ずかしくなって視線を逸らすと、にまーっと笑うメロちゃんと視線が合う。
先輩も、メロちゃんの存在に気づいて、爽やかに挨拶をする。
「理人のお友達? 初めまして。三年の葉山琉偉です」
「一年の浅井メロです。イッチーから話は聞いてます」
二人とも、すぐに人と距離を詰めそうなタイプなのに、どこかよそよそしい。
「理人、今からデートしない?」
「えっ!? 僕今から部活……」
「いいじゃん、いいじゃん、行ってきなよ。イッチーなんて部活ない日も部室にいるんだから、たまには野外活動しなくちゃ」
メロちゃんは、にこにこ笑顔で先輩に加担する。
「じゃあ悪いけど、理人連れてくね」
「え? ええ?」
「いってらっしゃーい」
こうして僕は、半ば強引に連行されてしまった。
途中すれ違った漫研のメンバーが、何事かとオロオロしていたけど、きっとメロちゃんが上手く説明してくれるだろう。
先輩の告白(?)から土日を挟んで月曜日、僕は漫研の部室で頭を抱えていた。
月、木が漫研の活動日で、僕はそれ以外の日も部室に入り浸っているけれど、今日は活動メンバーが集まる日だ。
といっても、幽霊部員が多く、部室に来るのは多くて五人。今日はまだ、隣のクラスの派手なギャル――浅井メロしか来ていない。
僕の話を聞いたメロちゃんは目を見開き、ひとこと「マ?」と言った。
「先週の金曜日、先輩が急に部室に来て。今度男同士の恋愛要素のある劇をやるから、役作りのために付き合ってほしいって」
「えーー! なんそれ、激アツじゃん。イッチー、マルロー様にガチ惚れしてたし、悩む理由なんてなくね?」
「だって急だし、マルロー様なら絶対こんなことしないし、役作りのためとはいえ、どう接していいか分からないよ」
物心ついた時から、僕は男の人が好きだった。初恋は朝ドラに出てた子役の男の子。
女の子になりたいわけじゃないけど、少女漫画はヒロイン目線でときめいているし、正直マルロー様にも淡い恋愛感情を抱いていたと思う。
男の人と付き合うこと自体に嫌悪感があるわけではない。
――そもそも、ふりでも誰かと付き合うなんて初めてだし、先輩は根暗の僕とは違う光の住人でイケメンだし、思ってたより強引でちょっと苦手なタイプかも……。
そう。僕は突然の出来事に混乱していた。
未だにあれは夢かもしれないと思うけど、連絡先を交換したスマホには、今朝も先輩から『おはよう』のスタンプが送られてきている。
「イッチー、少女漫画家になりたいんっしょ?」
「う、うん」
「だったら取材チャンスじゃん。琉偉先輩は役作りのため。イッチーは漫画のネタ探しのため。Win-Winだと思うけど」
「それは……確かにそうかも……。でも僕なんかが先輩といたら、浮くんじゃないかな」
「イッチーは可愛いって! 自信持ちな!」
メロちゃんは明るく力強く、僕を励ました。
彼女と話すたび、オタクに優しいギャルって実在するんだぁ、と感動してしまう。
「自分が可愛いとは思わないけど、取材と割り切って頑張ってみようかな。何事も挑戦だよね」
「その意気だ! で、実際琉偉先輩ってどんな感じ? 噂じゃ、演じる役によって別人になるから、本性はミステリアスって話」
「そうなんだ。この前初めて話したから、まだ全然分からないや。自信があって、ザ陽な人って感じがしたけど……」
背後でガラッと扉の開く音がした。
「りーひとっ」
「わっ!!」
てっきり、部員の誰かが顔を出したのかと思いきや、後ろからどんっと衝撃を受け、僕は肩を跳ね上げる。
顔を上に向けると、相変わらずキラキラと眩しい琉偉先輩が、僕を覗き込んでいた。
「先輩、今日は部活じゃ?」
「今日は体育館の点検があって、部活は基礎練だけで解散」
「そうだったんですね」
「驚かせようと思って黙ってた」
先輩は目を細めて笑う。
――って、何この会話!! 本当に付き合ってるみたいだ!?
急に恥ずかしくなって視線を逸らすと、にまーっと笑うメロちゃんと視線が合う。
先輩も、メロちゃんの存在に気づいて、爽やかに挨拶をする。
「理人のお友達? 初めまして。三年の葉山琉偉です」
「一年の浅井メロです。イッチーから話は聞いてます」
二人とも、すぐに人と距離を詰めそうなタイプなのに、どこかよそよそしい。
「理人、今からデートしない?」
「えっ!? 僕今から部活……」
「いいじゃん、いいじゃん、行ってきなよ。イッチーなんて部活ない日も部室にいるんだから、たまには野外活動しなくちゃ」
メロちゃんは、にこにこ笑顔で先輩に加担する。
「じゃあ悪いけど、理人連れてくね」
「え? ええ?」
「いってらっしゃーい」
こうして僕は、半ば強引に連行されてしまった。
途中すれ違った漫研のメンバーが、何事かとオロオロしていたけど、きっとメロちゃんが上手く説明してくれるだろう。


